2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of sperm evolution in marine sculpins with diverse reproductive modes: From macro and micro perspectives
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19J11278
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊藤 岳 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 精子 / カジカ科魚類 / 交尾行動 / 受精様式 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
近縁種に交尾を行う種と行わない種を含むカジカ類の精子の種間比較に関して、サンフランシスコ州立大学に長期滞在をして北米固有種の採集、および精子の計測を行っている。現在までに、80個体のカジカ類及び体内受精種と思われる魚類を採集した。これにより、今までに観察例がない新たな種のデータと、今までのデータを補強するデータを追加することができた。 タンパク質解析では、アサヒアナハゼ(カジカ科)の全ゲノムをよんだ。このデータを用いて、今までのタンパク質データと照らし合わせたが、タンパク質の同定には至らなかった。さらに、複数種のカジカの精巣のRNAを抽出し、アサヒアナハゼのデータにマッピングしたところ、同じカジカ科内でも、遺伝的距離が遠いと、マッピング率が悪く、比較解析ができなかった。しかしながら、これは精巣や生殖関連形質の進化速度が非常に速いことを示している。そこで、同属に交尾を行う種と行わない体外受精の種が混在するArtedius属の精巣のRNA,タンパク質を、カリフォルニアに長期滞在することで手に入れた。 電子顕微鏡観察では、カジカ類および体内受精魚の精子10種類を採集し観察を行った結果、これまでの予想通り、体外受精型の種は精子の鞭毛にSidefinがあり、体内受精型の種はSidefinがないことが分かった。さらに、精子頭部は体外受精型で卵形、体内受精型で細長型だったが、予想に反して紡錘形ではなく扁平で、光学顕微鏡では不明瞭であった点を明らかにすることができた。頭部の形態は精子の運動性能に関わっていると考えられるため、従来の「細長い頭部は粘性のある液体中での運動抵抗を下げる」という予測とは異なる、新規の解釈が必要になるかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数種のカジカの採集を行えていることで、精子の形態や運動性のデータに関して、新規のカジカの精子のデータや、今までのデータを補強するデータを得ることができている。また、その結果は、当初の予測通りの結果となっており、順調である。しかしながら、いくつかの種に関しては、大学閉鎖にともない、解析が進んでいない。また、電子顕微鏡観察もサンプルは用意できたものの、未だ解析に至っていない種がいくつかある。 タンパク質、RNA sequence解析に関しても、順調にサンプルを採集することができており、すでに国立遺伝学研究所のスーパーコンピューターを用いたde novo sequenceに着手している。 今回のカリフォルニア長期滞在の大きな目的である潮間帯に生息するカジカの繁殖様式の解明に関しては、最干潮時にのみ調査が可能であるが、現在月に2回以上調査に行っているにも関わらず、未だに卵塊は発見できていない。しかしながら、卵を持ったメスは採集されているため、沿岸域で卵を生んでいるのは間違いないと思われる。また、オス、メスのGSIを比較したところ、非常に長期に渡って高いGSIを示していること、オスとメスでピークに差があることから、当初の予測とは異なる繁殖様式をもつ可能性が浮上した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで通り、月に2回ほど野外調査にいき、カジカの採集を続ける。卵塊の発見が発見できれば、予測と同じ繁殖様式なのか、そうでないのかが明らかになる。並行して、スーパーコンピューターを用いた解析をすすめる。帰国後は、カリフォルニアで採集できたサンプルを用いて、新たにタンパク質の電気泳動、及びRNA sequenceを筑波大学下田臨海実験センター及び東海大学で行う。また、冬季に北海道へ行き、カジカ科魚類の祖先種であるケムシカジカの採集および精子データの解析を行う。これにより、堅牢な系統樹が作成できる。精子の形態、運動性のデータは系統樹と照らし合わせて系統種間比較を行い、海産カジカ魚類全体での交尾行動や精子競争レベルの違いに伴う精子の進化を解明する。
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