2019 Fiscal Year Annual Research Report
AITLにおけるTet2欠損環境細胞による腫瘍支持機構の分子基盤の解明
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19J11329
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤澤 学 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | T細胞リンパ腫 / TET2 / RHOA / クローン進化 / 支持環境細胞 / 前がん細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者に発生する血管免疫芽球性T細胞性リンパ腫(AITL)では、加齢と共に造血前駆細胞がTET2機能喪失変異を獲得し、さらにその一部がRHOA変異を獲得し、「がん」細胞となる。TET2変異のある造血前駆細胞は腫瘍細胞周囲の免疫細胞にも分化しており実際に変異が認められる。この腫瘍発症メカニズムにもとづいたモデルマウス (Mx-Cre-Tet2 flox/flox x CD2-G17V RHOA Tgマウス (TET2-/-RHOAマウス))を樹立した (Cancer Research, 2020)。このモデルマウスは約40週齢で濾胞性ヘルパーT細胞(TFH細胞)の特徴を持つ腫瘍(TFH腫瘍)を発症する。腫瘍組織の細胞浮遊液のCD4 T細胞とB細胞を磁気共鳴ビーズで分取し、ヌードマウスに腹腔内移植したところ、CD4 T細胞を単独で移植しても生着することができなかったが、B細胞を加えることで、TFH細胞は生着することができた。腫瘍組織内の血液免疫細胞をフローサイトメトリー法で解析し、野生型と比較し増加するB細胞分画を特定した。TFH腫瘍の腫瘍組織のシングルセルRNAシーケンシング解析を行ったところ、異常に増加したB細胞分画は、胚中心B細胞と形質芽球性細胞の特徴を持つ二つのプロファイリングに分けることができた。フローサイトメトリー解析によって胚中心B細胞分画がTFH腫瘍組織内で増加していることが明らかとなった。このモデルマウスのTFH細胞と胚中心B細胞の遺伝子発現プロファイルを用いて、インタラクトーム解析を行い、阻害分子のスクリーニングを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AITLのモデルマウスに関する論文がCancer Research誌に採択された。また、腫瘍組織内B細胞のシングルセルRNAシーケンシング解析によって、胚中心B細胞のプロファイルを持つ細胞集団がこのモデルマウスの腫瘍内で増加しているというプレデータを得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
AITLの腫瘍環境細胞がTFH細胞の腫瘍化を促進する機序について、マウスモデルを用いて解析する。具体的には、TET2-/-RHOAマウスのTFH細胞と胚中心B細胞の遺伝子発現プロファイルを用いて、インタラクトーム解析を行い、スクリーニングされた分子を用いて免疫不全マウスへの異種移植モデルの阻害実験を行う。現時点までの観察では、阻害分子の候補の一つとしてCD40LG抽出された。腫瘍組織細胞浮遊液をヌードマウスへ腹腔内移植し、 CD40LG阻害抗体を用いて阻害実験を行なったところ、CD40LG阻害抗体治療群においてIsotype群と比較し生着率の低下を認めた。さらに、胚中心B細胞分画とTFH細胞分画をセルソーターで分取し、共培養実験を行う。抗CD40LG抗体による阻害実験を行い、TFH細胞の増殖アッセイを行う。B細胞におけるTet2の欠損がAITLの腫瘍発症に寄与するかについて、マウスモデルを用いて解析する。CD19-Cre-Tet2 flox/floxマウスを、CD2-G17VRHOA Tgマウスとそれぞれ交配し、T細胞でG17V RHOAを発現し、B細胞においてのみTet2を欠損したマウスを樹立する。これらのマウスにおける腫瘍の発症の有無を含めた変化を観察する。モデルマウスで認められたB細胞の変化がヒトのサンプルでも同様に認められるかを解析する。具体的には、単細胞RNAシーケンシング、単細胞T細胞受容体/B細胞受容体レパトア解析を行う。
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Research Products
(3 results)