2019 Fiscal Year Annual Research Report
Ecological study on growth strategy of bamboo species in relation to above- and below-ground unique traits
Project/Area Number |
19J11336
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 慧人 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 竹林 / モウソウチク / 地上部 / 地下部 / 炭素循環 / クローナル植物 / 13Cパルスラベリング / 茎 |
Outline of Annual Research Achievements |
有用な食資源として中国より江戸期に導入され、日本各地へ移植されたタケ類モウソウチク(Phyllostachys edulis)が近年管理放棄にともない野生化し、周囲の植生へと拡大する現象が見られている。放棄竹林の拡大は、既存の生態系の物質循環や生物相に急激な変化を及ぼすことが指摘されている。社会問題にもなっており、竹林の拡大のメカニズムを理解し、効果的な管理方法を提案することが緊急の課題となっている。タケは地下茎によるクローン繁殖を行い、わずか2-3ヶ月で高さ15-20 mまでに成長する中空の竹稈をもつ。このような樹木ではみられない特性が、拡大の原因になっていると考えられるが、これまでにタケ特有の生態の定量的な評価により、竹林の拡大を理解するという研究のアプローチはほとんどなかった。そこで本研究では、竹林の拡大メカニズムを解明する上で必要な、(1)竹林の拡大を可能にさせる地上部の光環境条件の評価と、(2)地下部への分配様式、(3)光合成同化産物の輸送様式の解明を目的とし、研究を進めた。今年度は上記3つのテーマの中で、特に(2)と(3)に進展があった。(2)については、兵庫県淡路市に設置した竹林調査サイトでの野外調査を通して、竹林の地上部と地下部すべての器官の現存量・生産量・回転率を定量的に評価した。そして、竹林の地下部、特に地下茎が竹林の拡大メカニズムおよび成長戦略を理解する上で重要であることを明らかにした。(3)については、モウソウチクの光合成同化産物の輸送過程を明らかにするため、13Cパルスラベリングの手法を用いて光合成で固定された炭素を追跡する大規模な野外実験を京都市伏見区の竹林で実施した。この調査は現在も継続中であるが、これまでに高木樹木で知られていない傾向も得られており、モウソウチクの成長様式を理解する上で重要な成果になると期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査に多大な労力を要する竹林の地下部課題について、実施し、結果を得ることができているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
継続的な野外調査を通して、今年度は特に(1)竹林の拡大を可能にさせる地上部の光環境条件の評価と(3)光合成同化産物の輸送様式の解明に取り組む。(3)については、主に、昨年度から採取しているサンプルの炭素安定同位体比分析を行う計画を立てている。これらのデータ解析・とりまとめを通して、竹林の地上部と地下部の両面から、モウソウチクの成長戦略を考察することを目的として研究を進める。
|