2019 Fiscal Year Annual Research Report
上肢運動計測ロボットの周期非周期運動制御による高次脳機能障害診断
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19J11506
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
村松 久圭 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 周期/非周期運動制御 / モーションコントロール / 運動学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は脳損傷の運動障害による失った運動機能を再獲得するメカニズムを検討する【A】ロボットの運動制御研究(制御工学)と【B】運動学習研究(神経心理学)の複合領域研究を行う。 【A】ロボットの運動制御研究は周期/非周期分離フィルタを用いた周期/非周期運動制御のフレームワーク構築に成功した。これに基づき,六種類の周期/非周期運動制御手法(1. 周期位置/非周期力制御 2.周期位置/非周期インピーダンス制御 3.周期力/非周期位置制 4.周期力/非周期インピーダンス制御 5.周期インピーダンス/非周期位置制御 6.周期インピーダンス/非周期力制御)を提案した。周期/非周期運動制御は外乱オブザーバを用いた加速度制御に基づいて設計されており,周期運動と非周期運動のロバスト制御を実現した。これにより,外乱やモデル化誤差へ堅牢な実用性の高い制御を実現した。多軸マニピュレータを用いた実験を通して上記の六種類の周期/非周期運動制御手法を実機検証し,分離された周期運動と非周期運動の制御を確認した。さらに,ダイレクトドライブモータおよびリニアモータを用いた広帯域力推定が可能な3自由度パラレルリンク構造の上肢運動計測ロボットを設計した。 【B】運動学習研究は脳損傷に伴い運動機能を喪失した患者が新しく運動を獲得するメカニズムである運動学習を周期運動と非周期運動の観点から理解すべく,最初のステップとして若年健常者140名を対象とした運動学習実験を実施した。被験者は100試行の練習と15試行の評価で構成される115試行の螺旋書字運動を行い,その位置情報を計測した。計測された螺旋軌道を提案した周期/非周期分離フィルタを用いて周期軌道と非周期軌道へ分離し,周期軌道の遷移が運動技能の獲得に,非周期軌道が人間動作のバラツキに対応することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究開始時に計画していた【A】ロボットの運動制御研究(制御工学)と【B】運動学習研究(神経心理学)を周期性と非周期性の観点から複合的に実施した。令和元年度は当初計画されていた【A】ロボットの運動制御研究(制御工学)における上肢運動計測ロボットの設計を完了した。ダイレクトドライブモータおよびリニアモータを用いることにより,機械要素を最低限とした高精度運動および高精度計測を実現する構造を採用した。さらに,【B】運動学習研究(神経心理学)は最小躍度螺旋軌道を利用した運動学習実験を完了し,運動学習と周期運動の関係性に関する示唆を得た。 上記,計画された研究項目を達成した上で,本年度は来年度実施予定であった周期/非周期運動制御理論の確立に成功した。そして,周期運動への位置制御(精密制御)と非周期運動へのインピーダンス制御(安全制御)を同時実現した。 以上の進捗状況をもって,「当初の計画以上に進展している」という自己評価を下した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は研究開始時に計画していた令和二年度における健常者(高齢)および患者を対象とした運動学習実験をCOVID-19に伴う昨今の状況を踏まえ保留とする。代替として,本年度に著しい進捗が得られた周期/非周期運動制御の研究へより重点をおく方針へ変更する。具体的には,周期/非周期運動制御の核となる周期/非周期分離フィルタの最適化に関する設計論を構築し,周期/非周期運動制御のさらなる性能向上を目指す。
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