2019 Fiscal Year Annual Research Report
極性場を利用した二次元ハイブリッドメモリ材料の研究
Project/Area Number |
19J11523
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
首藤 雄大 熊本大学, 自然科学教育部理学専攻, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 酸化グラフェン / 水酸化ニッケル / 磁性 / ナノシート |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な機能性を示すナノシートはそれぞれ複合化させることで、多機能性ハイブリッド材料を開発することができる。本研究課題では導電性を示す還元酸化グラフェンと強磁性体である水酸化ニッケルナノシートを複合化させることでハイブリッド体による磁気抵抗効果の観測を目指す。 酸化グラフェンと水酸化ニッケルナノシートを液中で複合化し、ろ過することでハイブリッド膜を得ることができた。複合後では水酸化ニッケルの保持力が複合前に比べ大きくなっていた。これは複合化することで水酸化ニッケルの磁区が小さくなったためである。その後酸化グラフェンを選択的に熱還元することで還元酸化グラフェンと水酸化ニッケルのハイブリッド膜を得た。 還元後のハイブリッド膜の強磁性転移温度を測定すると還元前に比べて転移温度が下がっていることが明らかとなった。これは水酸化ニッケルが還元酸化グラフェンの層内に生じる圧力を受けることで水酸化ニッケルの層間距離が小さくなったためである。水酸化ニッケルはシート内にて強磁性相互作用を示すが、シート間では反強磁性相互作用を示す。そのため、層間の反強磁性相互作用が強まったことで水酸化ニッケルの強磁性転移温度が下がったことが示唆された。また、この還元酸化グラフェンの層内圧力は還元温度に依存しており、高い還元温度では還元が進むことで還元酸化グラフェンの層内圧力が大きくなる。この圧力によって水酸化ニッケルの強磁性転移温度がより低くなっていくことが観測できた。この結果から酸化グラフェンの層内には異方性の圧力が生じていることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果から、還元酸化グラフェンと複合化された水酸化ニッケルの強磁性転移温度が下がることが明らかとなった。また、還元前と還元後でのハイブリッド膜の特性評価はこれから行っていく材料応用において重要な知見となり、より効率的な実験を推進してくことができる。 以上のことから本研究課題はおおむね順調に進んでいると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はすでに得られている還元酸化グラフェンと水酸化ニッケルナノシートのハイブリッド膜において磁気抵抗効果の発現を試みる。 それぞれのシートをLBL法で積層させた後に、酸化グラフェンを選択的に還元した積層体を作製する。この積層体にSQUIDにて磁場をかけながら磁気抵抗効果の観測を行う。この際、積層パターンを変えた積層体をいくつか用意し、それぞれの磁気抵抗効果について測定を行うことで積層法依存の磁気抵抗効果についても検討を行う。
|