2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study on aplysiasecosterol A, a marine secosteroid
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19J11747
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田野 輝 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 天然物合成 / ステロイド化合物 / カップリング反応 / 求核付加反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
アプリシアセコステロールAは、海洋軟体動物アメフラシより単離、構造決定された9,11-セコステロイド化合物である。構造的特徴として、通常のステロイド骨格のA, B環に相当する部分が大きく異なり、三環性のγ-ジケトン構造を有していることが挙げられる。さらに、生物活性として、ヒト前骨髄性白血病細胞株(HL-60)に対する細胞毒性を示すことがわかっている。一方、生合成前駆体と考えられているアプリシアセコステロールBは、三環性骨格以外の構造は共通しているものの、HL-60細胞に対して細胞毒性を示さない。すなわち、細胞毒性の発現には、その三環性骨格が重要であることが予想される。一方で、天然から得られる量は微量であるため、種々の研究への展開には、全合成による供給が必要である。そこで、三環性骨格、D環、側鎖部分の構造を自在に連結可能な全合成経路を確立することで天然物、あるいは人工類縁体の量的供給、続く構造活性相関研究等への展開が可能と考えた。以上のことから本研究では、三環性骨格の構築およびD環の直接的な導入に重点を置いた、アプリシアセコステロールAの収束的な全合成を目指した。 本年度は、アプリシアセコステロールAの収束的な全合成に向けて、先に合成を達成している三環性の構造に対する、各種カップリング反応を用いたD環の導入の検討を行った。しかしながら、側鎖部分を有さないD環のモデル化合物を用いたクロスカップリング反応の検討においては、所望のカップリング体はほとんど得ることができなかった。その一方で、三環性の化合物から誘導したエンジオンに対する、D環モデル化合物の求核付加反応において、D環の導入が可能であることを示唆する結果が得られている。また、側鎖部分を導入したD環の合成に関しては、二環性エノンから5段階で、D環セグメントの母骨格の合成を達成している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた、カップリング反応によるD環セグメントの導入検討において、所望のカップリング体がほとんど得られなかったことから、合成計画の変更を余儀なくされた。一方で、カップリングセグメントの合成検討の中で、興味深い三環性のエンジオン化合物が得られた。この化合物の高い求電子性に着目し、種々の求核付加反応の検討を試みたところ、D環の導入が求核付加反応により可能であることを示唆する結果が得られている。 以上の、1)カップリング反応によるD環の導入が成功しなかったことによる遅れが生じたこと、2)求核付加反応による導入という想定外のアプローチを見出したことの二点から、全体としては「やや遅れている」との評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、三環性のエンジオン化合物に対する、D環求核付加反応による導入が可能であることが示唆される結果が、モデル化合物を用いた検討によって得られている。すなわち、側鎖部分が導入された、実際のD環セグメントにおいて、詳細な求核付加反応条件を検討することで、アプリシアセコステロールAの合成が可能であると考えている。このことを踏まえて、今後は側鎖部分の不斉導入および求核付加反応に用いるセグメントの合成を検討するとともに、より詳細に求核付加反応の検討を行うことで、D環の導入を達成する予定である。その後に、各種保護基の除去等を行い、アプリシアセコステロールAの全合成を達成する予定である。
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Research Products
(1 results)