2019 Fiscal Year Annual Research Report
1.3 GHz NMR装置の実現に向けた高温超伝導マグネット保護技術の構築
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19J11812
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
末富 佑 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 高温超伝導磁石 / 熱暴走 / 磁石保護 / 層内無絶縁法 / 超高磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
物質の分子構造を調べる核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance : NMR)には超伝導磁石が搭載されており、磁石の磁場が高くなるにつれて計測感度と分解能が向上する。このため、超伝導磁石の高磁場化が求められており、高温超伝導線材を用いた高磁場磁石の開発が加速している。高温超伝導磁石の最大の課題は、熱暴走現象に対するコイル保護であり、NMR装置に実装する場合は、更に空間的に高精度な磁場を生成する事も求められる。これらの技術課題に対して、高温超伝導線材の絶縁を取り去って銅シートと絶縁シートを層間に挿入しながら螺旋巻きする「層内非絶縁法(intra-Layer No-Insulation : LNI)」という新しい巻線方式を考案した。本研究ではLNI法を用いて、世界最高性能となる1.3 GHz(30.5 Tの磁場に相当) NMRに向けた、30.5テスラを発生可能かつ熱暴走現象から保護可能な高温超伝導磁石の開発を目指す。 本年度は、 (1)小型LNI高温超伝導磁石を用いた30.5 T超磁場の発生及び磁石保護の実証 (2)LNI高温超伝導磁石の解析コードの構築 を達成した。 (1)について、小型のLNI磁石を製作し、世界最高記録となる31.4 Tの発生に成功した。また、その環境下において熱暴走を強制的に発生させたところ、磁石が保護される事も確認し、LNI法の有効性を確認できた。(2)について、LNI磁石の電磁気的かつ熱的挙動を模擬できる非線形数値解析コードを構築した。構築した解析コードを用いる事で、より大型のLNI磁石の保護特性を評価する事が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
最終年度に実施予定であった、「30.5 T級の磁場発生及び磁石保護」を当年度に達成できたためである。当初は、LNI法に何等かの改善策を施す必要があると思われたため、このような計画にしていたが、LNI法の性能が予想以上に良く、これを達成できた。数値解析によって明らかになったが、これはLNI磁石が内部に有する特性抵抗が、従来手法(無絶縁法)で製作した磁石よりも2桁程度大きく、この大きな特性抵抗が保護時の挙動に対して有利に働いたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、構築した数値解析コードを主軸にして研究を進める。具体的には、保護時の挙動の支配因子の特定、LNI法の最適化、1.3 GHz NMR内層磁石の保護性能の評価を実施する。また、LNI磁石の大きな特性抵抗の要因についても、基礎的な実験を行って明らかにする。
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