2019 Fiscal Year Annual Research Report
Social formation of application oriented belief in English learning
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19J11831
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
赤松 大輔 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 信念 / 学習観 / 動機づけ / 外国語学習 / 学習方略 / 友人関係 / 海外留学 |
Outline of Annual Research Achievements |
急速な国際化に伴い,英語を用いたコミュニケーションの必要性が高まっている。今日の学校教育場面では,学び得た知識を実際のコミュニケーションへと活用できる人材の育成が求められている。本研究は,どうすれば英語の実践的な活用を重視する学習者を育成できるかという問いに対して,特に実生活での英語使用を重視する学習観である活用志向に着目して,活用志向の社会的な形成過程を解明することを目的とするものである。 平成31年度は,活用志向を形成する社会的要因のうち,文化的要因に着目した検討を行った。特に,活用志向を形成する文化的要因として英語圏の国への海外留学経験が与える影響を検討した。英語圏の国(カナダ,ニュージーランドなど)への留学を行う日本人高校生を対象に1年4波にわたる縦断調査を開始した。現在までに7月と12月の2時点の調査を終えている。現在までの分析の結果として,留学開始前から留学開始4か月後にかけて,生徒の活用志向が有意に向上した。また,学習方略として,既有の知識と関連づけながら新しい知識を獲得する方略である精緻化方略の使用の程度が増加した。また,こうした精緻化方略使用の向上は,活用志向の向上を媒介として生じていることが示された。さらに,留学開始前から留学開始4か月後にかけて,生徒の外向性や勤勉性といった自分自身のパーソナリティに対する評価,および友人関係が変化することも示された。また,活用志向は留学中の友人関係を予測することも示された。これらの結果から,海外留学が活用志向を向上させること,活用志向が留学中の効果的な学習方略使用や友人関係といった学業面・社会面双方の適応に寄与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画通りに進んでいると評価できる。その理由として,1年4波の縦断調査のうち2時点の調査を順調に実施できたこと,その調査において海外留学経験が活用志向を促進するという予測通りの結果が得られたことが挙げられる。しかしながら,留学中のオンライン調査において縦断データの対応がとれない生徒や回答の欠損が一部みられたため,当初の想定よりサンプルサイズが小さくなるという課題もみられた。 また,令和2年度に予定している縦断調査の準備として,心理尺度の選定や調査協力依頼を行った。令和2年度の調査では学業成績や社会的ネットワークといった機密性の高いデータも併せて収集するが,これらのデータの収集について,いくつかの学校から協力が得られる見通しが立ちつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は,以下の2つの研究を実施する予定である。 第一に,平成31年度に開始した海外留学に関する縦断調査を継続して行う。平成31年度の調査では,縦断データの対応をとるためのパスコード作成が調査協力者の生徒にとって困難であったり,一部の生徒の回答の欠損が見受けられたりしたという課題があった。これらの課題に対して,パスコードの修正や欠損値補完といった対策を講じる。また,平成31年度に収集したデータに関する分析を通して,海外留学が学習方略,友人関係,パーソナリティといった変数にも影響を及ぼすことが示されたことを踏まえ,今後も調査を継続して縦断的なデータを収集し,これらの変数の変化と活用志向の変化の関連を検討するための分析を適用する。 第二に,活用志向の形成における社会的要因として友人の活用志向に着目した検討を行う。特に,社会的ネットワークの枠組みに基づき友人間の活用志向の伝達過程を検討する。縦断調査を通して,活用志向をはじめとした心理変数に加えて社会的ネットワークに関するデータを収集する。分析には,縦断的データに基づく社会的ネットワークの分析手法である確率的アクター指向モデル(Stochastic Actor-Oriented Model: SAOM)を適用する。仮説は,以下の通りである。①時点を経るにつれて,活用志向の程度は友人間で類似していくという同化効果が生じる。②上記の同化効果は,特に友人の学習方法や動機づけを模倣するという学習方略であるピアモデリングが程度の強い生徒において強まる。
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