2019 Fiscal Year Annual Research Report
Massive MIMOのハードウエア構成を厳密に評価する伝搬モデルの構築
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19J11904
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
谷口 諒太郎 新潟大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 電波伝搬 / 無線通信 / ミリ波帯 / 伝搬モデル / Massive MIMO |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,まず複数回の実環境での測定と解析により,マイクロ波帯(5.12GHz)とミリ波帯(19.55GHz)の伝搬特性の違いを比較した.ミリ波帯の方が電力の減衰が大きいことや,草木の影響も大きく受けることを明らかにした.また,チャネル容量で比較すると,送受信距離が十分に近い場合はミリ波帯で高速な通信が可能だが,送受信距離が離れてくると,ミリ波のチャネル容量が小さくなり,マイクロ波帯の方がチャネル容量が大きくなることを示した.これらから,次世代移動通信で用いられるミリ波帯などの高い周波数帯の無線通信システムを評価するための伝搬モデルの必要性をより明確なものとした. また,提案システムであるマルチビームMassive MIMOでの使用が想定されるSHF帯の具体的な伝搬特性をシミュレーションにより解析した.特に,到来するパスのかたまりであるクラスタの数に着目し解析を行い,周波数が高いほど,クラスタ数が減少することを明らかにした.これは本研究の最も大きな課題である伝搬モデル設計に大きく影響のあるパラメータのひとつである. さらに,機械学習のひとつであるCNN(Convolutional Neural Network)を用いた提案システムの課題解決手法を提案・評価した.提案システムでは干渉除去のためのCMA適用後の信号は受信電力が低下し,位相が回転してしまうという問題があった.すでに補正方法については報告者らが提案済みだが,その補正にはパイロット及び受信信号の変調方式に関する情報が必要となる.そこで,CNNを用いることで変調方式推定を行った.結果として,マルチビームMassive MIMOの受信信号に対し,CNNで十分に変調方式推定が行えることを明らかにした. 研究員が筆頭の成果としては,論文が1件,電子情報通信学会をはじめとした国内外での学会発表が合計9件,受賞が3件があった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで大きく3つの研究成果を出しており,①複周波数帯における伝搬損失の比較検討,②SHF帯における受信感度とクラスタ数の関係に関する考察,③マルチビームMassive MIMOにおける畳み込みニューラルネットワークを用いた変調方式推定,が挙げられる. ①は本研究課題の主目的である「新たな伝搬モデルの提案」の根拠となるものであり,本研究を行う意義をより強いものとした. ②で明らかにした受信感度やクラスタ数は,提案する新たな伝搬モデルにおいて,特性に強く影響を及ぼすパラメータであると考えられるため,これらをシミュレーションで明らかにできたことは,研究を次の段階に進めるための大きな一歩となった.またこの検討を通し,提案モデルや提案システムを今後評価する際に用いられるシミュレータを製作できたこと自体も大きな進捗である. ③の畳み込みニューラルネットワークは,昨今様々な研究で活用されている機械学習の一手法である.本検討は新たな伝搬モデルの提案ではなく,もう一つの研究目的である「提案システムの総合的な評価」に影響する.本成果から,提案システムの最終的な性能が向上する可能性は十分に考えられる.また本結果を導き出すにあたり,研究者が機械学習に関する知識や技術をある程度身に着けられたこと自体も進捗のひとつである.本研究課題の主目的である新手な伝搬モデルの提案において,これまでは提案モデルに適用するすべてのパラメータをシミュレーションや実験結果から一定の理論に基づいて人為的に導出すること想定していたが,機械学習を用いることでパラメータをより効果的に決定づけることができ,提案する伝搬モデルの特性をより現実のものに近づけられる可能性があるためである.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,シミュレーションをもとに20GHz帯の伝搬モデルの提案と評価を行い,これをもとに既に提案しているMassive MIMO向けの伝搬モデルを修正あるいは新たに提案する.その後,大学キャンパス内や市街地での電波伝搬測定を行い,提案する伝搬モデルの有効性を評価する. 具体的には,まず2020年4月から同年6月の3ヶ月間で,レイトレーシング法と呼ばれる手法を用いることで,20GHz帯の伝搬特性を解明する.環境や場所などによる受信電力やパスの到来方向などの値を導出し,既に提案しているMassive MIMO向けの伝搬モデルのパラメータの調整や,新たな伝搬モデルの提案を行う.また,同様にレイトレーシング法を用いてMassive MIMOのチャネル容量を導出したものと提案する伝搬モデルからチャネル容量を導出したものを比較することで,提案モデルの妥当性を評価する. 2020年7月から10月の4か月間で,新潟大学キャンパス内及び新潟市街地において,電波伝搬測定を行う.従来の提案モデルは一部のオープンスクエア環境の電波伝搬測定のみをベヘスとしているため,オープンスクエア環境において不足していると考えられる環境の地点の測定を行う.また,ストリートセル環境を中心とした測定を行う. 2020年11月から12月までの2か月間では,測定結果と提案する伝搬モデルの特性を比較評価する.また,測定結果を提案する伝搬モデルに反映することで,より実際の環境に近い特性を持った伝搬モデルを提案する. 2021年1月から3月の3ヶ月間では,提案する伝搬モデルを用いてMassive MIMO全体の評価を行う.特に,アンテナ配列や制御法の違いによる性能評価を実施する.測定結果やその結果を適用し評価した伝搬モデル,Massive MIMOの評価結果については,随時学会での発表や論文化を進める.
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Research Products
(9 results)