2019 Fiscal Year Annual Research Report
Whole-kidney three-dimensional analysis for clarifying the pathophysiology of kidney diseases
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19J11928
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 頌 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 臓器透明化 / 交感神経 / 糖尿病腎症 / 虚血再灌流 / 低酸素誘導因子 / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
交感神経系は腎臓の複雑な機能を制御するために重要な役割を担っていると考えられるが、腎臓内での詳細な構造は分かっていなかった。本研究では、腎臓全体における交感神経の3次元構造を把握するため、臓器透明化 (CUBIC) を用いてマウス腎臓を透明化した上で、光シート顕微鏡を用いた3次元イメージングを試みた。 まず、交感神経・動脈に関して3次元での免疫染色の条件を最適化し、腎臓全体での可視化に成功した。これを用いて腎臓の虚血再灌流障害を起こしてから10日後の腎臓を透明化して観察したところ、健康な腎臓と比較して交感神経が著明に脱落していた。交感神経から分泌される神経伝達物質であるノルアドレナリンの量を測定したところ、虚血再灌流障害10日後の時点の腎組織内では著明に低下していたことから交感神経の機能異常が生じていることが裏付けられた。さらに経時的な変化を観察したところ、交感神経マーカーで標識される領域は障害直後に最も減少し、時間と共に徐々に回復するものの28日後でも完全には回復していなかった。このように、虚血再灌流後に交感神経の機能異常が長期間にわたって遷延していることが明らかとなり、論文化した (Hasegawa S et al. Kidney Int, 96(1), pp129-138, 2019)。 さらに上記論文では、交感神経や動脈以外にも腎臓の様々な構造の3次元イメージングにも成功している。特に糸球体のイメージングを用いることで、糖尿病モデルで生じる糸球体肥大が低酸素誘導因子 (HIF) 安定化薬の投与によって腎臓全体で軽減されることが分かり、これを腎エネルギー代謝の変化と合わせて考察し、論文化した (Hasegawa S et al. Kidney int, in press)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は臓器透明化を用いた腎臓全体の3次元イメージングを確立し、それを用いて腎虚血再灌流障害後の遷延する交感神経障害について明らかにして論文化した。さらに応用例として、糖尿病で生じる糸球体肥大がHIF安定化薬の投与によって腎臓全体で軽減されることを示し、腎エネルギー代謝の変化と合わせて論文化した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果はすでに論文として報告しているが、交感神経に関する研究では腎臓病との関連についてさらに新しい知見も得られている。次年度はこれを深めて論文化することを目指す。
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Research Products
(13 results)