2019 Fiscal Year Annual Research Report
Spatial cognition and taboo of the Himba and Herero pastoralists in Namibia: Issues relating to their land tenure
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19J11958
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宮本 佳和 神戸大学, 国際文化学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 牧畜民 / 空間認識 / 禁忌 / 土地所有 / 土地争い / ヒンバ / ヘレロ / ナミビア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、牧畜民が特定の場所で共有する禁忌に着目し、現地の論理に基づいた土地の分類の仕方を検討するものである。ナミビア北西部では近年、干ばつを契機に発生した放牧地争いが高等裁判に発展し、法的に権限を与えられた伝統的権威が、近代的な法制度に基づく土地区分を根拠に追い出しを正当化している。一方で、人々の生活空間の中には禁忌が存在する聖なる場所があり、独自の土地の分類の仕方が存在する。本研究は、この土地区分と土地分類のズレに着目し、人々の日常的な行為と土地への表象過程の検証を通して、内部の論理から土地争いを再検討することを目的としている。 この目的のもとで、まず本年度前半は、これまで蓄積してきた禁忌に関する一次資料の整理を行い、広域にわたる聖なる場所の現地調査に向けて準備をした。予備報告としてまとめたこれらの資料は本年度中に刊行された。また、年度前半にはケープタウン大学の研究協力者と学術交流を行い、調査に関するアドバイスをいただいた。年度後半はナミビア北西部において、これまで関係を築いてきた調査協力者とともに車両を用いた広域調査を実施した。聞き取り資料の書き起こし、翻訳作業もデータ収集と並行して行った。調査を実施するなかで、聖なる場所の多くが当該地域の戦いの歴史、そして父系クランの移動の歴史と関連していることが明らかになった。また、干ばつを契機として発生する土地争いに関して、降水量と家畜の頭数との関係についての統計資料の収集もあわせて行った。加えて、最高裁へ上告された土地争いの判決が調査期間中に下されたため、首都の最高裁判所にて関連資料を入手することができたのも収穫だった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に実施した広域調査によって判明した聖なる場所と戦場跡および父系クランとの関係は、本研究課題の中で中心的に扱う土地分類についての分析の視点のひとつとなったため進展であった。また、これまで収集してきたヒンバとヘレロの禁忌についての予備報告1本が本年度中に刊行された。研究実施計画で予定していた学術交流の一部は本年度中に実施できなかったが、オンラインでのやり取りをはじめとした代替案で対応したため研究課題遂行の大枠において大きな遅れは生じていない。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる令和2年度においては、本年度の現地調査で蓄積した一次資料のなかでも戦いの歴史および父系クランの祖先との関係を事例検討の対象に据え、土地争いが行われている場所との関係を検証する。特に、複数の父系クランの関係を中心に扱い、土地争いの追い出しの理由を再検討する。これらの分析は、令和2年度中の成果公表を目指している。なお、物理的な移動を必要とする文献資料収集や現地調査に関しては、新型コロナウイルス感染拡大の状況を見ながら渡航時期を調整する予定である。
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Research Products
(2 results)