2019 Fiscal Year Annual Research Report
らせん空孔の精密制御を基盤とする記憶力を有するらせんフォルダマーの創成と応用
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19J12012
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川端 賢 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | らせん高分子 / らせん空孔 / 光学分割 / フォルダマー |
Outline of Annual Research Achievements |
人工のらせん高分子が形成する内部のらせん空孔を活用することができれば、空孔のサイズやらせんキラリティに基づく『基質選択性』や『不斉選択性』の付与が可能となり、新たな概念に基づく革新的なキラル材料の創製が期待される。 本年度はこれまでに得られた知見をもとに、申請者がこれまでに合成したアキラルなオリゴアミドを側鎖に有するポリマーの様々なキラルゲスト分子に対する包接挙動と一方向巻きらせんの誘起について検討を行なったが、ゲスト分子の包接やそれに伴うらせん誘起が困難であることを示唆する結果が得られた。そこで、らせん高分子が形成する内部空孔の応用に関する検討をさらに強力に推進するために、らせん空孔を有する既存高分子を用いたキラル材料としての活用についても検討した。 これまでに当研究グループでは、汎用高分子であるシンジオタクチックなポリメタクリル酸メチル (st-PMMA) に内部空孔を有する一方向巻きのらせん構造を誘起可能であることを見出している。さらに、st-PMMAが形成するらせん空孔内部にフラーレンが効率的に包接されることも報告している。以上の背景をもとに、st-PMMAに誘起した光学活性ならせん空孔を利用し、代表的ならせん高分子の一つである光学活性なポリ乳酸 (PLA) の光学分割について詳細な検討を行ったところ、一方の鏡像異性体がst-PMMAのらせん空孔内へ不斉選択的に包接されることを明らかにし、光学活性ならせん高分子の光学分割に成功した。 さらに、PLAの開始末端に導入したアジド基とのクリック反応を介してフラーレン部位を導入した結果、光学活性なst-PMMAへ包接される際の不斉選択性および包接収率を飛躍的に向上させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、汎用高分子であるシンジオタクチックなポリメタクリル酸メチル (st-PMMA) が内部に形成するらせん空孔のキラル材料としての応用について検討を行った。代表的ならせん高分子であるD-およびL-ポリ乳酸の当量混合物のトルエン溶液を光学活性なst-PMMAゲルに添加・撹拌し、吸収スペクトルやNMR測定により詳細に検討した結果、一方の鏡像異性体が不斉選択的に包接されることを明らかにした。さらに、st-PMMAのらせん空孔内に強固に包接されるフラーレン (C60) をポリ乳酸の末端に導入することで、不斉選択性および包接収率が飛躍的に向上することを見出した。また、光学活性なポリ乳酸がst-PMMAに一方向巻きに片寄ったらせん構造を誘起可能であるとともに、C60末端の導入による誘起能力の向上も見出した。光学分割およびらせん構造の誘起においてC60が効果的な分子キャリヤとして機能することを明らかにしただけでなく、新たな分子キャリヤとしてのポリ乳酸の可能性を示した。これらの成果は、今後、人工らせんフォルダマーの形成する内部空孔を用いたキラル認識能や不斉触媒能を有するキラル材料の創製において重要な知見であると考えられ、学術論文として取りまとめ、国際的な学術雑誌に投稿予定である。以上の研究成果により、本年度はおおむね順調に進展があったと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに合成した光学活性なフォルダマーのらせん空孔を不斉場に用いた不斉触媒反応について検討を行う。また、フォルダマーの人工チャネルとしての機能を検討すると共に、らせん空孔を利用した基質選択的な不斉反応を介した物質送達可能な人工チャネルの開発を目指す。不斉触媒としての検討にはCDおよび吸収スペクトル測定、HPLC測定、NMR測定などを用い、人工チャネルの検討には蛍光スペクトル測定などを用いる。 また、合成高分子が形成するらせん内部空孔のさらなる応用をも目指し、単独では包接されない種々のらせん高分子について、フラーレンやポリ乳酸をキャリヤとして用いることで、シンジオタクチックなポリメタクリル酸メチルの形成するらせん空孔を用いた光学分割に挑戦する。さらに、フラーレンやポリ乳酸の末端に触媒部位や重合開始剤を導入することで、らせん空孔内での立体特異性重合や不斉触媒反応も行う。
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Research Products
(2 results)