2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Age of Exile: A New Penal System in the Qing China
Project/Area Number |
19J12022
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
キム ハンバク 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 流刑 / 充軍 / 配所 / 里程配流 / 道里表 / 発遣 / 中国法制史 / 中国の刑罰 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下三つの方面で研究を遂行行った。 第一に、論文「清代の「里程配流」――五軍道里表の改訂をめぐって――」が査読誌『史林』に掲載された。「里程配流」とは、それまで名目に過ぎなかった配流距離が実際の配流に反映され、原籍地から距離の差等によって罪人を流すようになったことを指す。該論文は、道里表が同一犯罪に対する同一処罰のみではなく、内地全域を配所にして罪人を分散する機能も有していることを明らかにした。そして、道里表の改訂について各版本別に分析し、道里表の改訂は、里程配流という法精神と地方の事情という現実問題を道里表のなかで調整していった過程を示していることを説明した。 第二に、もともと労役刑である徒刑の執行に配流刑の論理が援用されていく様相を研究した。該研究は、2019年8月に開かれた東洋法制史夏合宿で「清代徒刑の変質と懲罰要素として「里程」の浮上」と題して発表した。乾隆年間に入ると徒犯を労役させることがだんだん難しくなり、雲南をはじめとする一部地域では労役が行われなくなった。このような状況下で、徒犯の管理のために試みられたのが、里程配流であった。日本法務省所蔵の『山東省五徒表』は、徒犯の配置にも里程配流のロジックが援用されていたことを示す。 第三に、配所に送られた配流犯の実態を確認した。2019年8月から2020年1月までに中国で滞留しながら四川省档案館の清代档案文書を閲覧し、配流の施行状況を調査した。該研究の成果は、中国・アメリカの学会で発表した。清朝が配流犯の釈放でその過剰問題を解決しようとしたことを、該档案文書の配流犯の名簿から確認できたことが大きな収穫である。もともと配所に到着した配流犯は赦免されなかったが、乾隆年間を経ながら配所の罪人を釈放しはじめた。その結果、名簿から確認できる配流犯一人一人の実際配流期間はだんだん短くなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の目標は二つであった。 第一に、道里表のデータ作成である。清朝は辺境に流すのではなく、原籍地から「どれほど」遠くに送るのかを重視した。そのため作ったのが「道里表」であり、配流刑内の刑量――流刑の場合、二千里・二千五百里・三千里――によって配流地が指定されるものであった。 去年は、既存に完了した嘉慶十四年『五軍道里表』のデータ入力に加え、乾隆八年『軍衛道里表』と乾隆四十四年『五軍道里表』のデータを加え、一つの研究として完成することができた。その結果物が査読誌『史林』102巻5号に掲載された論文「清代の「里程配流」―五軍道里表の改訂をめぐって――」である。この論文は充実なデータの活用に基づいたものであり、いままで看過されてきた道里表の改訂に着目した点で価値があろう。 第二に、四川省档案館に赴き、巴県档案を調査することであった。巴県档案は、配流刑に関して配流犯の名簿、移送書類、管理の報告書、逃亡した配流犯の逮捕要請など、法典や会典では見られない事例・実務関係の史料が豊富である。 そのため、2019年8月23日から2020年1月12日までに中国で滞留しながら四川省档案館に保管されている清代档案文書を閲覧し、配流の施行状況を調査した。該研究に関しては、中国で開かれた『第二届“法律与歴史”学術沙竜』と、アメリカで開かれた2020 Southeast Conference of the Association for Asian Studiesで発表を行った。 以上二つの年度目標に基づき現在までの進捗状況を評価すると、おおむね順調に進んでいると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これからは、研究発表と博論の完成、及びそれ以後の研究の発信に尽力する。 まず、档案調査のため、中国第一歴史档案館で3週間の資料調査を遂行する。前年度の四川の档案資料が地方政府のものであれば、本年度の档案は中央の資料にあたり、中央か らの配流刑の設計や行政上の修正に関する資料が入手できる。この研究の成果は8月に開かれる明清史夏合宿において発表することを希望している。 そしてこれまでの研究成果に踏まえて、六章立ての博論を完成する。博論を提出した2月以降は、研究の発信に注力する。特に欧米学会において研究成果を報告することを計画している。現在候補としているのは2021年3月シアトルで開催されるAAS(Association for Asian Studies)年例学会である。
|