2019 Fiscal Year Annual Research Report
学校現場における特別な支援を要する子どものインクルージョンに関する実証的研究
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19J12148
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久保田 裕斗 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | インクルーシブ教育 / 合理的配慮 / 再参入の手続き |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、通常学校におけるインクルーシブ教育実践がどのようなものであるかについて、その学校の内外における諸アクターが実践を構成していくメカニズムに焦点を当てて記述・分析することにある。 本年度の研究成果として、日本教育社会学会における報告において、1981年に発足した「障害児を普通学校へ・全国連絡会」の会報を資料として、障害児の普通学校就学をめぐる運動言説を検討した。とくに、運動の根拠づけのされ方が、当事者性を留保するかたちでも行われていたことに着目し、そうした論理の展開のされ方がどのように構成され、いかなる機能を有していたのかを明らかにすることを試みた。また、全国障害者解放運動連絡会議の機関誌を得て、資料分析を開始した。 さらに、関西圏にあるα小学校でフィールドデータを収集し、障害児と健常児の同一学級処遇をおこなう小学校において、障害児本人の意思の表明に依拠した合理的配慮がいかに構成されるのかについて明らかにした。そこで障害児は、場面の参与者を分節化する境界設定のせめぎ合いを演じつつ、その都度ごとに配慮の妥当性を提起することで、場面への再参入を果たしていた。こうした成果は、『教育社会学研究』の第105集に「小学校における「合理的配慮」の構成過程:障害児による「再参入の手続き」を中心に」として掲載された。 以上の研究と平行して、α小学校と同一地域にあるβ小学校での参与観察・インタビュー調査を継続しており、本研究が日本でのインクルーシブ教育実践の展開へ与えうる示唆について探求している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究成果の一端を口頭発表という形で公表し、さらに国内学会誌に査読付き論文として掲載することができるなど、研究成果を広く公表する目標を達成することができた。また、地域の学校における医療的ケア児を対象とした教育実践について参与観察を開始し、本研究課題をさらに深める可能性を発見することができた。こうした点に鑑み、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず本年度の研究成果をさらに論文として公刊する。また全国障害者解放運動連絡会議に関連する資料、及び申請者が参与観察をおこなう地域における運動に関する資料の収集に継続してあたる。さらに、医療的ケア児に対する教育実践の参与観察とデータ分析をすすめ、研究を完成させたいと考えている。
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