2019 Fiscal Year Annual Research Report
Microscopic investigation in valence fluctuating systems in point-contact spectroscopy
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19J12194
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
志賀 雅亘 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 希土類化合物 / 価数揺動 / 価数秩序 / c-f混成 / 点接合分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、YbPd, EuNi2P2の点接合分光実験を行い、以下の成果を得た。 価数揺動物質であるYbPdは、低温においてYb2.6+とYb3+が周期的に配置された構造(価数秩序状態)をとる。加えて、YbPdは低温において特異な磁気特性や重い電子状態を示す事が報告されている。本研究においては、これらの起源を微視的に明らかにする事を目的にYbPdの点接合分光実験を行った。その結果、微分伝導度信号(dI/dV信号)は、非対称なバックグラウンドにゼロバイアス近傍のディップ構造が重なった形状を持つことが分かった。また、理論計算を用いてこのdI/dV信号を解析した結果から、異なる価数状態を持つYbサイト(Yb2.6+, Yb3+)が独立に近藤共鳴状態を形成していることが明らかになった。従って、低温における特異な磁気特性や重い電子状態の起源は、異なる価数を持つYbサイトで独立に近藤共鳴状態が形成されることによって局所的な電子状態が変調されることに起因している可能性があることが分かった。 EuNi2P2は低温において重い電子状態や価数揺動状態を示す希土類化合物である。本研究では、EuNi2P2の低温における価数揺動状態や重い電子状態の起源を微視的に明らかにするべく点接合分光実験を行った。その結果からdI/dV信号は、ゼロ電圧近傍に非対称なダブルピーク構造を持つことが分かった。理論計算を用いた解析の結果から、伝導電子とf電子の混成(c-f混成)によって新たな混成バントが形成されることに起因して、非対称なダブルピーク構造が現れていることが明らかになった。従って、EuNi2P2の低温における価数揺動状態や重い電子状態の起源は、c-f混成によって新たな混成バンドが形成されることに起因している可能性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
YbPdの結果をまとめた論文はPhysical Review B誌に掲載され、EuNi2P2の結果をまとめた論文についても近日中に論文誌に投稿する予定である。最も重要な点は、価数状態の異なるYbPdとEuNi2P2の比較より、希土類イオンサイトでの局所的な電子状態が重い電子状態形成において、非常に重要な役割を担っている可能性があることを明らかにできたことである。この結果は、当初の予定を上回る結果である。従って、当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
EuNi2P2の点接合分光実験で観測されたdI/dV信号に現れる非対称なダブルピーク構造が、一般的な信号であるかを検証するため以下の2つの研究課題を行う。 1.YbInCu4の点接合分光実験を行う。YbInCu4は価数揺動物質であるとともに低温で重い電子状態を形成していることが報告されている。また、これまでの電気抵抗や比熱測定などの輸送特性の結果から、低温でEuNi2P2と同様にコヒーレントな重い電子状態を形成していると考えられる。そこで、YbInCu4の点接合分光実験を行い、dI/dV信号に現れる非対称なダブルピーク構造の一般性を明らかにする。このYbInCu4の点接合分光実験については、すでに本年度に予備実験を行った。その結果、非対称なダブルピーク構造の観測には成功している。しかし信号がEuNi2P2に比べて不鮮明である為、本年度はアニーリングなどの手法を用いて、鮮明な信号の観測を目指す。 2.EuNi2(P1-xGex)2の点接合分光実験を行う。これまでの電気抵抗や比熱測定などのバルク物性実験から、PサイトをGeで置換することで、c-f混成の強度が低減することが報告されている。そこで、EuNi2(P1-xGex)2の点接合分光実験を行い、dI/dV信号に現れる非対称なダブルピーク構造の一般性や混成ギャップの大きさについて系統的に調べる。
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Research Products
(11 results)