2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19J12210
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
矢口 完 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 二倍体 / 非二倍体 / 中心体 / ゼブラフィッシュ / 小頭症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、申請者が最近発見したヒト体細胞における染色体数変化に伴う中心体数の異常が、細胞運命、組織形態、病態形成にどのように影響するかを階層的に理解することを目的とする。2019年度はまず、二倍体から逸脱した脊椎動物の人為的作製および脊椎動物個体内における中心体可視化を試みた。ゼブラフィッシュ配偶子の試験管内操作によって非二倍体ゼブラフィッシュ胚を作製し、倍数性解析によって作製した胚が非二倍体であることを確認した。また、数種の胚固定法および数十種の中心体マーカーの組み合わせからゼブラフィッシュに使用可能なものを探索することで、ゼブラフィッシュ固定胚における中心体の可視化に成功した。次にこれらの手法を用いて、非二倍体胚において中心体にどのような変化が生じているかを調べた。非二倍体胚と二倍体コントロールの中心体の比較解析結果から、非二倍体胚では目、脳、皮膚など広範な組織において中心体数の異常が生じていることが明らかとなった。さらに、中心体数異常細胞が出現する発生ステージは各組織によって異なることがわかった。具体的には、受精後一日目では脳や目のみで顕著な中心体数異常が生じており、受精後数日経つと広範な組織器官で中心体異常細胞が出現する様子が観察された。興味深いことに、発生初期から中心体異常細胞の出現が観察された非二倍体胚の脳や目では、分裂遅延および細胞死の頻度が増加しており、また、小頭症に類似した器官サイズの矮小化が観察された。このことから、染色体数変化に伴う中心体異常は、分裂遅延および細胞死を誘導することで組織内細胞数の大幅な減少を引き起こし、それに起因して器官サイズの矮小化が惹起されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、細胞の非二倍体化に伴う中心体異常による病態形成モデルとしてマウスを使用する予定で解析に着手したが、1)マウス組織内での細胞位置情報を保ったまま細胞や中心体を可視化することが不可能又は困難であったこと、また2)マウスでは非二倍体胚の発生が胚盤胞期までに限定されて形態形成への影響の解析が行えないことが問題となった。そのため組織深部まで切片化せずに光学顕微鏡観察が可能で、かつ非二倍体状態で孵化期まで生育し多様な臓器における倍数性変化の影響の解析が可能なゼブラフィッシュを本研究のモデル生物として採用した。実際に中心体解析を実施すると、マウス個体よりもゼブラフィッシュ胚の方がシャープな中心体像を得るのに適していることが分かり、非常に安定した解析を行うことに成功した。さらに、ゼブラフィッシュを用いることで、本研究の目的である倍数性変化による組織の形態解析について当初想定した以上に充実した知見が得られることが明らかになってきた。これにより、2020年度も本研究目的に沿った実験が可能であると期待できる。既にこの戦略によって、染色体数変化に伴う中心体数異常が広範な細胞種で生じることを見出すことに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年に発見した非二倍体脊椎動物における中心体数異常、分裂遅延、細胞死、器官サイズ矮小化の因果関係を明らかにする。高解像度ライブイメージング等の手法を取り入れ、中心体数異常が生じた細胞のその後の細胞運命および周辺の組織に対する影響をより詳細に追跡可能にする。さらに、CRSPR/Cas9ゲノム編集によって中心体数を正常化した非二倍体胚を作製、解析し、細胞死頻度および器官サイズがどのように変化するかを調べることにより、染色体数変化により細胞の生存性および器官形成の堅牢性が脅かされる原因が中心体数異常に起因しているかどうかを検証する。 また、上記の細胞および組織の異常化により、実際にどのような生命機能が影響を受けているかを検証する。目における明暗適応現象や脳におけるシグナル伝達が想定される。
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