2019 Fiscal Year Annual Research Report
Molecylar mechanism in the development of fruit disorders by viroid infection
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19J12238
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
鈴木 貴大 岩手大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ウイロイド / 果実着色肥大障害 / 壊疽症状 / マイクロRNA398 / マイクロRNA398a-3p / スーパーオキシドジスムターゼ / 活性酸素種 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 4種類のリンゴゆず果ウイロイド (AFCVd) 変異体をトマト (品種: ラトガース) に接種した. その結果全ての感染個体において, 葉や茎, 花には無病徴であったが, 果実に縮小化, 裂果, 空洞果, しり腐れ, 着色不良, フラット化などの症状を示し, 特にAFCVdの塩基配列の46番目の塩基がアデニン (A) である変異体が感染している果実は強い症状を示した. 結論として, AFCVdの塩基配列の46番目の塩基がトマト果実に対する病原性に関与している可能性がある塩基で, その塩基がAだと病原性が強くなることを明らかにした. (2) ウイロイド感染による壊疽症状の発現機構を調査するために, ダイサー様タンパク質2と4をノックダウンしたトマト『72E系統』とウイロイド高感受性品種トマト『ラトガース』にジャガイモやせいもウイロイド (PSTVd) を接種した. その結果PSTVd感染72E系統は葉脈と茎に壊疽症状を示し, 活性酸素種 (ROS) の上昇が観察された. さらにストレス応答性マイクロRNA種であるmiR398とmiR398a-3pが対照区と比べ, それぞれ約770%と868%増加した. これと同時にmiR398によって負に調節されているスーパーオキシドジスムターゼ (SOD) 1と2及びmiR398a-3pによって負に調節されているSOD3の発現が減少した. また壊疽症状を示した強毒型及び致死型PSTVd感染ラトガースもROSの発生量の上昇が見られたが, 壊疽症状を示さなかった弱毒型PSTVd感染ラトガースでは, ROSの発生量は上昇しなかった. 結論としてPSTVd感染で壊疽症状を示す場合, 過剰に発現したmiR398とmiR398a-3pがSODsの発現を抑制し, 過剰なROSの産生を制御できず, 壊疽症状が発生すると明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) AFCVd感染トマトにおいて, AFCVdの自然宿主であるリンゴと類似した果実病害を再現することができた. このことから今後AFCVdとトマトの実験系で, 研究結果が得られるまでの時間を短縮することができるようになった. ウイロイドの病原性 (宿主域や病徴の強弱) の違いはウイロイドの分子構造や塩基配列で決定されており, これまでの研究で宿主域に関するAFCVdの塩基配列の領域を発見し, さらに本研究で病原性に関連する塩基配列の領域を発見することができた. AFCVdの塩基配列の46番目がAである変異体は当初の予想以上に病原性が強くなり, 新たな症状として, トマト果実のしり腐れ症状と空洞果症状を観察できた. 現在このAFCVdの果実障害の原因遺伝子を明らかにするために, AFCVd感染トマト果実からトータルRNAを抽出し, 次世代シーケンサーを用いたRNA-seq解析による網羅的な遺伝子発現解析を行っている. (2) ウイロイドの最も特徴的で典型的な病徴の一つである壊疽症状の一因を明らかにすることができ, その一因がmiR398とmiR398a-3pの異常な発現上昇によるROSの消去活性に関与するSODsの発現阻害であることを明らかにした. マイクロRNAは多くの真核生物で多様な生物学的プロセスを制御しており, ウイロイド感染植物でもストレス応答 (防御応答) として機能し, 酸化ストレス (ROSの発生) に関与することを明らかにした. 現在酸化ストレスに関連している細胞内のカルシウムイオンの流入とこれに関連し, さらにウイロイド感染で上昇するマイクロRNA種であるmiR4376に着目して, ウイロイド感染による酸化ストレスと壊疽症状の発生について解析している.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) AFCVd感染トマトにおいて, リンゴと類似した果実病害を示すことを明らかにし, さらにAFCVdのトマト果実への病原性に関連するAFCVd塩基配列の領域を発見した. すなわちウイロイド分子側の果実病原性発現機構の一因を明らかにした. そこで次に宿主側から果実への病原性発現の原因を調査するために, AFCVd感染トマト果実をRNA-seq解析で網羅的に遺伝子発現解析をする. これまでの研究で, ウイロイド感染植物においてジベレリン生合成関連遺伝子とカルコンシンターゼ (CHS) 合成関連遺伝子の発現低下が報告されており, ジベレリンは果実の発達, CHSは果実の色素合成に関連しているので, これら2つの遺伝子に着目して, 遺伝子発現解析を行う. (2) PSTVd感染トマトでmiR398とmiR398a-3pの過剰発現に伴う酸化ストレスによる壊疽症状の発生を明らかにした. またこれまでの研究で, ウイロイド感染トマトで感染細胞内のカルシウムイオンの流入が変化すると報告されている. そこで次にウイロイド感染による酸化ストレスと壊疽症状の発生について調査するために, ROSの発生と深く関連している細胞内のカルシウムイオンの流入に着目して研究を進める. 現在ウイロイド感染トマトでmiR4376の発現上昇を見出しており, トマトのmiR4376はカルシウムイオンのATPaseを調節するCalcium-transporting ATPase 10 (ACA10) のmRNAの発現を負に制御している. そこでウイロイド感染トマトにおけるmiR4376の発現上昇によってACA10の発現が低下し, 細胞内のカルシウムイオンの流入が乱され, これが酸化ストレスに繋がり, 壊疽症状などのウイロイドによる病徴が発現するのではないかと仮説を立て, 検証する.
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Research Products
(5 results)