2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19J12288
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高橋 太郎 千葉大学, 園芸学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 重複受精 / 精細胞 / 卵細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
被子植物の生殖過程において、配偶子同士の認証・接着・融合といった重複受精のプロセスは、雌雄の配偶子に存在する受精因子の相互作用により緻密に制御される。研究開始時点までに、精細胞に存在する4種類のタンパク質が膜局在型の受精因子として同定されており、卵細胞から分泌されるEC1ペプチドも受精に関与することが報告されていた。しかし、これらの相互作用についてはほとんど未解明であった。本研究では、受精因子同士の相互作用を調査することにより重複受精制御機構を紐解いていく。 本年度は、既知の受精因子であるGCS1、GEX2、DMP8、DMP9それぞれの変異体を材料に、二重変異体および変異体をバックグラウンドとする受精因子マーカーラインを作出した。これらの系統を用いることで、受精因子相互作用の考察が可能になるほか、胚のう内に放出された後の受精因子局在を効率的に観察することができる。dmp9変異体をバックグラウンドにGCS1を緑色蛍光で可視化した系統においては、胚のう内にて原形質膜局在様の蛍光が観察され、受精直前のGCS1局在変化が示唆された。 さらに、花粉管中の精細胞におけるEC1添加によるGCS1局在変化を詳細に観察するため、split-GFPを利用した系を考案し、ベクターの構築・形質転換を行なった。同時に全長EC1を合成する条件を検討し、相互作用解析に向けた実験材料の準備を整えた。 加えて、GCS1と相互作用する雌性配偶子膜局在因子の探索に着手した。GFPタグを挿入し分泌型に改変したGCS1を卵細胞で発現させ、仮想されるGCS1レセプターと結合したのちにGFP抗体を利用した免疫沈降を行い、これを材料にプロテオーム解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精細胞局在受精因子4種類の欠損系統およびこれら受精因子を蛍光タンパク(GFPおよびmNeongreen)で可視化したマーカーラインを掛け合わせることで、受精因子欠損系統をバックグラウンドとする他の受精因子マーカーラインを作出した。重複受精時の表現型を観察したところ、dmp9の欠損により卵細胞との受精が停止した精細胞では、GCS1-mNeongreenが原形質膜局在様の局在パターンを示していた。これは以前に報告されていた、通常内膜系に多く存在するGCS1が、EC1存在下において精細胞の最外層に表出することで膜融合が可能になるという考察と一致する。この局在変化を解析するために、伸長中の花粉管内においてGCS1が精細胞の原形質膜に表出した時にGFP蛍光を発する実験系を構築した。並行して、花粉管に添加するための全長EC1を合成する準備も整えた。 GCS1との相互作用を示す雌性配偶子局在因子の探索においては、細胞外に分泌されるよう改変したGCS1(GAH)を卵細胞で発現するEC1p::GAH株を作出した。EC1p::GAH株では受精の成功率が有意に減少しており、GAHが精細胞上のGCS1に先んじて雌性配偶子上のGCS1レセプターと結合したことが示唆された。プロテオーム解析の結果をもとに相互作用候補タンパク質の探索に着手しているなど、研究は概ね計画通り進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度構築したGCS1局在変化観察実験系を運用し、GCS1-EC1相互作用を解析する。 作出した他の系統についても表現型解析を進めるとともに、未だ作出できていない欠損/マーカーラインの組み合わせの補完を行う。また、それぞれの受精因子について直接的な相互作用が存在するのかを実験的に明らかにする。 さらに、雌性配偶子上のGCS1相互作用候補タンパク質を絞り込んだのちに、それらの変異体を入手し重複受精の表現型を解析する。
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