2019 Fiscal Year Annual Research Report
トポロジカル相における電子間相互作用の数値的研究:特異分散による新しい量子液体
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19J12317
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
工藤 耕司 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | トポロジカル相 / 電子間相互作用 / 分数量子ホール効果 / トポロジカル秩序 / トポロジカル不変量 / エニオン / トポロジカル絶縁体 / バルクエッジ対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
いわゆるトポロジカル相は、従来の相構造を特徴付ける自発的対称性の破れでは分類できない物質相として知られている。電子相関効果は、自由電子系では出現しない多様なトポロジカル量子現象を生み出す。本研究課題では、数値的手法を用いてトポロジカル相の電子間相互作用効果に関する理論的枠組みの構築を目指している。本年度では主要な研究テーマとして、(1)高次トポロジカルモット絶縁体の提案、(2)断熱変形に基づく分数量子ホール効果の理解、の2つに取り組んだ。 (1)高次トポロジカルモット絶縁体の提案:本研究では、高次トポロジカル絶縁体の電子相関効果を解析し、新しいトポロジカル物質「高次トポロジカルモット絶縁体」を提案した。さらに、この状態がカゴメ格子上のハバード模型で出現することを大規模な数値計算を通して実証した。高次トポロジカルモット絶縁体のバルクのトポロジカル不変量は、スピン励起のみギャップレスな角状態の出現を予言する。このバルクエッジ対応は高次トポロジカルモット絶縁体固有のものであり、電子間相互作用にその起源を持つ。本研究成果について日本物理学会及び複数の国際会議で発表を行なった。成果をまとめた論文はすでに出版済みである。 (2)断熱変形に基づく分数量子ホール効果の理解:トポロジカル数の断熱普遍性は、トポロジカル相の重要な概念の一つである。本研究では、ヒルベルト空間の次元を変える非解析的な変形が、周期的条件下での整数・分数量子ホール効果の断熱接続性を与えることを明らかにした。さらに、この特殊な断熱変形におけるトポロジカル縮退の不規則な変化において、ストレーダ公式に類似した構造が存在することを解析的に示した。本研究成果について日本物理学会で発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では新しいトポロジカル量子現象としてトポロジカルモット絶縁体を提案し、「高次トポロジカル物理」と「強相関電子系の物理」の融合を通して新しい理論的枠組みを構築することができた。この研究成果は、トポロジカル相における電子間相互作用効果研究のさらなる理論展開に大きく貢献すると期待される。 また、非解析的な断熱変形に基づく新しい理論的枠組みの構築は、分数量子ホール効果の研究において有用であると考えられる。この概念は種々の分数量子ホール系で応用可能であり、さらなる発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
非解析的な断熱変形に基づく分数量子ホール効果に関する理論のさらなる発展に励む。分数量子ホール効果の数値的研究において、計算コストを削減に大きく貢献する擬ポテンシャルが広く使われている。しかしエニオンはその非局所的な性質から、単純化した問題に帰着させることは困難である。そこで本研究では、相互作用するエニオンの数値解析手法を構築する。さらに、トポロジカル不変量・断熱変形の観点から種々の分数量子ホール状態の理論を打ち立てる。
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Research Products
(10 results)