2019 Fiscal Year Annual Research Report
組織維持を担う細胞群個体群動態の理解と定量的データ解析
Project/Area Number |
19J12319
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩波 翔也 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 数理モデル / 個体群動態 / 細胞分化 / データ解析 / 恒常性の維持 / 造血幹細胞 / 骨代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内では、細胞群が相互に影響を与え合いながら組織の恒常性を維持している。ここでは、幹細胞が維持する組織として老化の研究が盛んに行われている造血組織と、細胞が組織を形成と破壊のバランスを取りながら維持している骨組織に着目した。 造血幹細胞は全ての血液細胞と免疫細胞に分化する能力を持ち、生涯にわたって造血組織を維持すると考えられている。また、造血幹細胞の分化機構について、様々な研究結果から複数のモデルが提唱されている。さらに、加齢による造血幹細胞の能力の変化が、造血組織の老化を引き起こすという研究成果が報告されている。造血幹細胞が造血組織を維持し、老化するメカニズムを解明するために、造血幹細胞分化を記述する数理モデルを開発した。この数理モデルを用いて、若齢マウスと老齢マウスから取得された造血幹細胞を移植したときの末梢血中での各細胞系統の変動を解析した。このとき、非線形混合効果モデルの手法を取り入れ、マウスでの移植実験のデータのばらつきを統計的に扱うことが可能な解析手法を構築した。若齢マウスと老齢マウスの造血幹細胞の能力を比較し、老化に伴って骨髄球の産生が多くなることを説明した。今後は、造血幹細胞分化の確率シミュレータを開発し、細胞の分化と組織の維持の関係性の定性的・定量的な解釈を目指す。 骨組織は骨芽細胞と破骨細胞が相互に作用し合うことで、骨形成と骨吸収のバランスをとりながら維持され、一般に、加齢と共に骨量が減少する。また、重力変化や閉経などの摂動によって骨量が変化することが示唆されている。ここでは、マウスで取得された骨代謝マーカーと骨量変動の長期の時系列データと、人工的に重力をかけられたマウスのデータを同時に解析し、骨代謝マーカーの変動から骨量の変動を説明することに成功した。今後は、他の摂動実験を説明しうる数理モデルを開発していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
造血幹細胞移植の実験データと骨量変動の時系列データの解析に成功し、細胞と組織の変化を説明する枠組みは構築できた。細胞分化を網羅的に捉える確率シミュレータの開発に取り掛かっており、当初の計画通りに研究は進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従って、造血幹細胞分化を捉える確率シミュレータと、骨代謝の履歴から骨量変動を計算する積分方程式による数理モデルを構築する。細胞群の変化と組織の変化をつなぐ原理を見出すために、大規模な計算機実験と、他の摂動を加えた実験データの解析を行う。
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Research Products
(2 results)