2019 Fiscal Year Annual Research Report
シグナルペプチドペプチダーゼによるC型肝炎ウイルスコアタンパク質の制御機構の解析
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19J12369
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平野 順紀 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | SPP / HCV |
Outline of Annual Research Achievements |
C型肝炎ウイルス(HCV)のコアタンパク質の成熟化と分解機構の研究について、コアタンパク質の発現と分解をリアルタイムでモニタリングできる実験系を新規に確立し、コアタンパク質の分解に関与する新規因子の探索を行った。CRISPR/Cas9システムを用いて遺伝子の網羅的スクリーニングを行った結果、コアタンパク質の分解機構に関与する新規因子を同定した。この新規因子を性状解析した結果、複数のシグナル経路のうち、コアタンパク質の分解が本因子を介するシグナル経路にのみに依存すること、ユビキチンライゲースのTRC8の作用を制御することが示唆される結果を得た。さらに、コアタンパク質の分解と同様の動態を示す宿主因子として、免疫機構に関与する新規の因子があることを明らかにした。本因子とコアタンパク質の関連性を検討した結果、HCVはコアタンパク質を利用することで本因子の発現を低下させ、宿主の免疫系を逃れることで持続感染を成立させている結果を得た。本研究成果の一端は、第38回アメリカウイルス学会において口頭発表した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
C型肝炎ウイルス(HCV)のコアタンパク質は、宿主因子のシグナルペプチドペプチダーゼ(SPP)の不活性時に速やかに分解されることが知られている。この分解機構はウイルスの誘導する病原性に深く関与することが知られているが、詳細な分解機構は不明であったため、コアタンパク質の分解に関連する宿主因子の探索を行った。コアタンパク質の発現動態をフローサイトメトリーで評価できる実験系を使用し、CRISPR/Cas9システムによりゲノムワイドに網羅的なスクリーニングを行った。スクリーニング陽性の細胞集団をフローサイトメトリーを用いて回収し、次世代シークエンサーを用いて解析した結果、コアタンパク質の分解に関与する新規因子を同定した。先行研究では、SPPで切断されないコアタンパク質はユビキチンライゲースのTRC8によってユビキチン化され、プロテアソームによる分解を受けることが知られているが、本因子はTRC8と直接相互作用すること、本因子によるTRC8の制御がコアタンパク質の分解に必須であるという結果を得た。また、SPPの基質となる他の複数の宿主因子に注目してその動態を検討したところ、コアタンパク質と同様にSPP欠損細胞で発現が顕著に低下する宿主因子があることが示唆される結果を得た。本因子の発現低下機構を解析することにより、HCVはコアタンパク質を利用することで、宿主の免疫機構を回避する機能を有していることを明らかにした。以上から、本年度の研究は、HCVの新規の病態発現機構および免疫回避機構を明らかにした点で、期待を大きく上回る成果を上げたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた結果をもとに、同定した新規因子の関与する未成熟コア蛋白質の分解機構に関して、さらに詳細な分子メカニズムを明らかにするとともに、小胞体における既存の分解機構との機能的な類似点と相違点を比較する。また、HCVの免疫回避機構におけるSPPの役割について、免疫細胞の活性化との関係性を検証する。さらに、SPPを肝臓特異的に欠損したモデルマウスの病態を解析することで、生体内におけるSPPの機能的意義を明確にする。
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