2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19J12404
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮本 勇一 広島大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | フンボルト / 教授学 / 教授学説史 / 陶冶理論 / 学問と人間形成 / PISA後の教育改革 / プロイセン教育改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はドイツの教授学研究、教育改革の今日的の主要言説、またそうした言説の中における古典的な陶冶理論なかんずくフンボルトの陶冶理論と教育改革の構想の高い位置付けを、関連書籍・ドイツ教育改革行政資料・新聞雑誌等から広く捉える所から始まった。今日の教授学上・教育改革上の言説の中で、研究と改革の歴史的正統化の根拠として受容され、再構成されてきた今日のフンボルト像は、しかしながら、1800年当初の当時の文脈の中でのフンボルトの活動や著述などに立ち戻る時、多くの問い直されるべき余地があることが浮き彫りとなり、フンボルトの陶冶理論及び教育改革の中に見られるフンボルトの教授学的な知見を導出し描出することが、今日の教育改革の根拠づけに対する別様な解を開きうる意義を持ちうることが明らかとなり、研究課題として位置づけられた。 具体的にはフンボルトの学校教授の構想が、単なる理念的位置付けしか得てこなかったこれまでの先行研究に対して、本研究では、フンボルトが改革期に、学校視察や教員との交流を通して具体的な学校教授のカリキュラム論的・教授学的知見を残していたことを明らかにし、かつ、これらの教授学的知見の成立史的背景をフンボルトの初期思想形成期にまでさかのぼって体系的に記述・構成していくことで、フンボルトの陶冶理論に基づく学校教授の構想と教育改革の諸プロジェクトへの従事過程を明らかにすることができた。その検証の過程では、当時の改革史料を翻刻・分析することで、これまで明らかにされてこなかったプロイセン教育改革期のフンボルトの改革へのコミットや具体的な教育課程の審議過程を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究成果の論旨・論証のストラクチャの見通しに対して、以下の数点を足すことができた点で当初の計画を大幅にうわ回る成果を得ていると考えられる。
①方法論の厳密化-思想史と社会史の対立と相克の取り組みが日本でもドイツでも、教育学でも教授学でもフンボルト研究でもなされていることを発見し、その知見の厚みを重ねて多角的にあぶりだすことができた。②フンボルトの改革当時の学校実践の具体の描出-ホラックとトロムナウによる、フンボルトも関わった学校での教育実践を扱うことができた。先行研究でも詳しく述べられてきたものであったが、フンボルトが実践と絶妙な距離をとって批判的評価をしていたことをあぶりだすことができ、特色ある論述が展開できた。③陶冶理論的教授学の学説史への展望-これまで自身の研究の落としどころが不明確であったところたいし、種々の検討と文献精読を重ねる中で、陶冶理論的教授学の学説史の重要性を提起するに至った。この鍵概念は今日のドイツの教育学にもとてもアピールするところが多く、この問題提起を3月にドイツで発表し、大変好評と批判的コメントを受けた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の知見が上述の通り刷新されるにあたって、新たな研究の課題もいくつか浮上している。第一に当時の教育課程審議会である「学問委員会」での審議過程はまだ翻刻がし切れていない部分があるため―論証に欠損はないものの―、それらを進めることで、より強固な史料基盤を整えたい。第二に、1800年当初の学校教育の状況と学校教育を巡る論争に係る資料整理が追いつかなかったため、フンボルトの構想の当時における特質がやや薄弱なままに留まってしまった点であるため、すでに渉猟してきた文献数十点を軸にその点の論証を進める。第三に、我が国でもフンボルト研究が現在刻々と進んでおり、直近の研究成果も含めているものの、さらなるフォローアップを通して自身の研究の提議の意義と特質をより鮮やかにまとめていきたい。 これに加えて、同研究の意義や問題設定に関わる点として、教師像の歴史的再検討という点も視野に入ってきた。19世紀初頭の学術委員会における教育課程の審議過程の分析及びフンボルトの教師論を捉える中で、コメニウス以来普遍的な技術を追及してきた教授学と教師像とは異なったモデルが現れてくる。フンボルトら新人文主義的な教育思想・教授学思想においては、普遍的な技術というものが希求されることはなく、たえざる個性化と独自性がなによりも求められていた。彼らのスローガンは、ペスタロッチの普遍的なメトーデを乗り越えよ、だったのである。普遍的な技術を個性的なものに転回していくというラディカルな思想は、コメニウス以来ペスタロッチ・ヘルバルトへと受け継がれていく教授法の普遍思想とは全く異なる教授学系譜として描くことができないだろうか。まして今日の主潮流としても台頭してきた省察的実践家モデルとも差異化をはかりながら、教師像の変容と転換のための新たな教師論言説の文脈を掘り起こすことに意義を見出し、探究の課題の射程に含めることとした。
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[Presentation] Lesson Study-based Training of Teacher Educator: Case Study on Self-Study and Cooperative Lesson Study2019
Author(s)
Nariakira Yoshida, Yasushi Maruyama, Mitsuru Matsuda, Kazuhiro Kusahara, Shigeo Mase, Kazuya Kageyama, Shotaro Iwata, Yuichiro Sato, Miyuki Okamura, Maho Yodozawa, Yuichi Miyamoto, Aiko Hamamoto, Asuka Matsuura, Yu Yamamoto, Seigi Naganuma, Mayumi Kawamura
Organizer
The World Association of Lesson Studies
Int'l Joint Research
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