2019 Fiscal Year Annual Research Report
酸化イミダゾールジペプチドによる新規抗酸化/ROSシグナル制御機構の解明
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19J12416
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
垣花 優希 大阪府立大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 酸化イミダゾールジペプチド / 抗酸化 / 抗炎症 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、申請者が発見した酸化イミダゾールジペプチド (酸化IDPs) による生体制御機構の解明を目的としている。その達成のため、今年度は以下の項目を行った。 ラジカル捕捉剤を用いて、酸化IDPs産生における反応中間体をタンデム型質量分析装置 (LC-MS/MS) で解析した。その結果、酸化IDPsの前駆体であるIDPsにラジカル補足剤が付加した物質が発見されたことから、酸化体形成にはIDPsのイミダゾール基のラジカル化が関与していることが示唆された。 酸化IDPsと内在性ラジカル種との反応を調べた。その結果、酸化IDPsは内在性ラジカル種と反応することが明らかとなり、またラジカル種によって反応性が異なることを見出した。この時、IDPsとラジカル種との反応性は見られなかった。酸化IDPsとの反応性が高かったラジカル種の一つであるペルオキシナイトライトを用いて、反応産物をLC-MS/MSで解析した。その結果、ペルオキシナイトライトとの反応によって酸化IDPsのイミダゾール環が開裂することが明らかとなった。さらに試験管内でのペルオキシナイトライトによる3-ニトロチロシン生成系においては、酸化IDPsが3-ニトロチロシン生成を有意に抑制したが、IDPsでは効果が見られなかった。 RAW264.7細胞を用いて、リポ多糖誘導性の炎症に対する酸化IDPsの抗炎症効果を調べた。その結果、酸化IDPsの前処理により培地中の亜硝酸濃度、iNOS遺伝子発現の減少が見られた。この時、IDPsではこの効果は見られなかった。さらに詳しく調べるためにマイクロアレイで遺伝子発現を網羅的に解析した。現在、変動遺伝子を解析中である。 以上より、酸化IDPsは、IDPsにはないラジカル消去活性、抗炎症活性、遺伝子発現への影響を持つことがわかった。上記の結果について論文投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は酸化IDPsが内在性ラジカル種の消去能を持ち、抗酸化作用や抗炎症作用があることを明らかにした。また、酸化IDPsには遺伝子発現に影響を及ぼす可能性があることも見出した。以上のことから本年度の進捗状況は、「おおむね順調に進展している。」と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度は概ね計画通りに研究が進展したので、2020年度も引き続き研究計画をもとに酸化IDPsの生体制御機構の解明を進める。具体的には、マイクロアレイの結果を踏まえた遺伝子発現解析、酸化ストレスや炎症に関連するタンパク質の発現・リン酸化シグナルの解析を行う。得られた結果をまとめ、論文投稿を行う予定である。
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