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2019 Fiscal Year Annual Research Report

ケニアのアート作品制作の民族誌的研究--グシイ族のソープストーン彫刻を事例として

Research Project

Project/Area Number 19J12441
Research InstitutionTokyo Metropolitan University

Principal Investigator

板久 梓織  首都大学東京, 大学院人文科学研究科, 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2019-04-25 – 2021-03-31
Keywordsグシイ / ソープストーン / アート / 土産物 / 工芸品
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、ケニアのグシイによるソープストーン彫刻産業を対象に、アフリカの無名の人々によるアート作品が、どのように制作され、販売されるのかを現場の参与観察から明らかにすることを目的としている。この目的の達成に向けて、本年度は8月から11月まで、ケニアで現地調査を実施した。現地調査では、まず、ソープストーン彫刻の生産から販売までの各プロセスを詳細に観察した。次に、主たる産業の担い手であるグシイ社会を理解するために、グシイの一家と暮らし、彼らの生活を経験していくことに重点を当てた。今回の調査では制作の各プロセスを明らかにできたが、グシイの生活は今後、調査を継続する必要がある。現時点までの調査からは、グシイの生活様式は植民地時代から大きく変わったといえるが、その一方でタブーや生活倫理などは現在でも生活に根深く残っているように思われる。次回調査ではその点により焦点を当てていく予定である。本調査はグシイとソープストーン彫刻産業について、基礎的な知識を習得しようとするものである一方、ソープストーン彫刻産業が生産地内部での消費はほとんどなされず、生産地外からの注文によって成立していることがわかった。また、商品の種類も多岐にわたっており、人気商品の変遷など、商品そのものに焦点を当てた調査も今後行う必要がある。
研究成果の発信も積極的に行った。5月には、ソープストーン彫刻産業の制作プロセスの概要を日本アフリカ学会においてポスター発表を行った。12月には、「アフリカからアートを売り込む―研究と企業の活動から考える現状と展望」という科研費主催のシンポジウムで、ソープストーン彫刻産業従事者の労働賃金をテーマに登壇した。調査によって得られた成果を発信することに加えて、アフリカン・アートや工芸品を売るバイヤー及び観光都市に焦点を当てた民族誌の新刊紹介を『社会人類学年報 45号』において行った。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

本研究の要である、現地調査において、期待以上の発見と進展があった。現地調査では、ソープストーン産業従事者の家庭に滞在できることになり、調査を順調に進められた。滞在先には、産業従事者が複数おり、それぞれ異なる作業に従事しているため、各プロセスの実際の作業現場を調査することができ、ソープストーン彫刻ができるまでの一連の手順を把握できた。また、報告者は調査前までは研磨や艶出しの技術の習得を目的としていたが、本来2年目に開始予定であった装飾作業も、少しだが着手できたことも大きな収穫であった。さらに今回の調査期間中、一度だけ海外(ドイツ)からのバイヤーと遭遇でき、自己紹介することができた。次回調査時に詳しくバイヤーとしての仕事を見せてもらう約束を得た。実際、その後メールが届き、2020年の村への訪問予定を知らせてくれている。この出会いは、今後、海外のバイヤーにソープストーン彫刻がどのように認識され、販売されているのか調査する道標になるものと考えている。
ケニア到着後の調査開始前には、ナイロビのケニア国立博物館を訪問し、そちらを受入機関としてケニア政府調査許可証を取得した。また、ケニア国立公文書館も赴き、植民地時代のソープストーン彫刻に関する資料を採集した。
調査と並行して、研究成果も発表した。5月には、日本アフリカ学会でポスター発表を、12月には、科研費主催シンポジウム「アフリカからアートを売り込む―研究と企業の活動から考える現状と展望」に、登壇した。本シンポジウムでは、日本のアフリカン・アートや雑貨を扱う企業の方々も登壇しており、日本でのソープストーン彫刻の販売に関して調査協力を依頼できる展望が望めた。
また、3月には、首都大学東京で、ケニア国立博物館主任研究員ジュグナ・ギチェレ氏と研究打ち合わせをおこなった。
以上が、現在までの進捗状況である。今後も調査を行う予定である。

Strategy for Future Research Activity

本来は4月から調査開始予定だったが、新型コロナウイルスの影響で、現時点で渡航の見通しが立っていない。本研究は現地調査を要とするので、そこで、ここでは夏以降をめどに渡航するものと仮定して、推進方策を記述する。まず、調査前までに、前年度の調査データをまとめ、調査成果として、産業従事者の労働賃金に関する日本語論文と彼らのライフヒストリーに焦点を当てた英語論文を執筆する。また、制作プロセスをテーマにした研究ノートを日本アフリカ学会に投稿する。
次回の調査目的は、ソープストーン彫刻産業の実態を記録し、外部者(アフリカ内/外)の要請の実際を把握することとグシイ研究における倫理観や慣習の変化を分析することである。具体的には、ソープストーン彫刻産業従事者のライフヒストリー調査や収入と支出の経済調査を実施する。また、海外からのバイヤーや従事者間での取引の場を参与観察し、どのような注文や交渉がなされているのか、どのような商品が人気が高いのか調査する。可能であれば、海外からのバイヤーにもインタビュー調査を行う。また、前回調査に引き続き、装飾技術を習得する。それに加えて、アーティストであるエルカナ・オンゲサ(ElkanaOng’esa)が計画している、彫刻学校での教育を参与観察する。産業の調査と並行して、グシイの生活を滞在型調査で学び、グシイ社会にどのような歴史的変化が起きているのか分析する。特に、グシイ社会の、性的な恥の概念と本産業との関連を明らかにする。というのも、本産業は基本的に男女分業で成立しており、グシイ社会では男女間のタブーが周辺民族と比べて強いからである。グシイ社会と本産業の相関関係を探る予定である。
帰国後は、調査成果として日本文化人類学会に論文を投稿する。なお、ケニア渡航が難しければ、日本や他国でソープストーン彫刻がどのように販売されているのかを調査するなど適宜対応する。

  • Research Products

    (4 results)

All 2019 Other

All Int'l Joint Research (1 results) Presentation (2 results) Book (1 results)

  • [Int'l Joint Research] ケニア国立博物館(ケニア)

    • Country Name
      KENYA
    • Counterpart Institution
      ケニア国立博物館
  • [Presentation] 「ケニア・グシイのソープストーン彫刻産業の作業工程―採石から販売まで―」2019

    • Author(s)
      板久 梓織
    • Organizer
      日本アフリカ学会
  • [Presentation] 「創作に従事して得られる賃金―ケニア・グシイのソープストーン彫刻の制作現場から」2019

    • Author(s)
      板久 梓織
    • Organizer
      科研費主催シンポジウム「アフリカからアートを売り込む―研究と企業の活動から考える現状と展望」
  • [Book] 「新刊紹介 Mahoney, Dillon The Art of Connection: Risk, Mobility, and the Crafting of Transparency in Coastal Kenya.」『社会人類学年報 45号』2019

    • Author(s)
      板久 梓織
    • Total Pages
      8ページ
    • Publisher
      弘文堂
    • ISBN
      978-4-335-51105-9

URL: 

Published: 2021-01-27  

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