2019 Fiscal Year Annual Research Report
植物表皮細胞においてスフィンゴ脂質が伝達する位置情報シグナリングの解明
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19J12442
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 賢司 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ / 表皮細胞分化 / スフィンゴ脂質 / 発生・分化 / 転写因子 / 形態形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
多細胞生物の発生において、多様な機能を持つ細胞が適切に配置されるためには、個々の細胞の位置情報が適切に認識される必要がある。植物では、表皮細胞が植物体の最外層の細胞層を占める。表皮細胞の位置依存的な分化は、植物の発生において放射方向の細胞パターニング過程で最初に起こる象徴的なイベントである。しかし、どのようにして表皮細胞が分化するべき”最外層”という位置情報が認識され、表皮細胞の適切な位置での分化が達成されているのかは明らかになっていない。本研究課題では、表皮細胞分化の鍵転写因子ATML1に着目して、表皮細胞分化の空間的制御を司る分子基盤を明らかにすることを目的とする。 ATML1の相互作用脂質のスクリーニングを実施したところ、スフィンゴ脂質をその有力な候補として同定した。逆遺伝学的手法や薬剤を用いた生理学的手法を用いてATML1-スフィンゴ脂質間相互作用の意義を解析したところ、スフィンゴ脂質のATML1への結合がATML1の安定性に必要であることが明らかになった。さらに、表皮細胞におけるスフィンゴ脂質の局在を解析したところ、特定のスフィンゴ脂質が表皮細胞内で偏って存在していることが示唆された。これらのスフィンゴ脂質局在の偏りが植物細胞の”外側”という位置情報をATML1に伝達する際に重要な意義を果たしている可能性があることを見出した。 これらの研究結果から、植物の表皮細胞分化における位置情報伝達機構に対して新奇なモデルを提案するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたATML1の相互作用脂質のスクリーニングや形質転換体の作出などがおおむね順調に進展したため。
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Strategy for Future Research Activity |
ATML1のスフィンゴ脂質を介した安定性の制御に関わると考えられる因子の解析などを通して、脂質による転写因子の機能の制御の分子機構についてより詳細な解析を進める。
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