2019 Fiscal Year Annual Research Report
衛星形成理論と地上観測に基づいた巨大ガス惑星まわりの衛星化学組成の解明
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19J12542
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中嶋 彩乃 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 衛星形成 / 土星 / リング構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、衛星形成モデルを元に数値計算を行い、化学組成進化と組み合わせることで、現在の観測と整合的な衛星形成モデルの解明を目指す。採用1年目となる平成31年度は、すでに探査機カッシーニによって詳細な観測データが得られている土星系を対象に研究を行ってきた。まず、土星衛星の形成モデルは2つあり、1) 惑星円盤中で全衛星が形成された、2) 土星リングの固体物質が降着することによって衛星が形成されたというモデルである。しかし、両モデルが競合している状態で、未だに議論が続いている。私は、両モデルに対してそれぞれシミュレーションを実施し、衛星が獲得する化学組成にどのような違いが生まれるか、どちらのモデルが観測データと整合的であるかを結論付けることを目標としている。 平成31年度は2) の衛星形成モデルを検討する前段階として、土星リングを模擬した大粒子数のN体計算コードの改良を行った。さらに、その計算精度を確認するための試験的な計算として「衛星-土星リングの重力相互作用による衛星軌道の変化」について調べた。その結果、これまで理論上の示唆のみで留まっていた、惑星リングの構造変化を惑星科学分野の数値シミュレーション上で初めて確認することができた。さらに、衛星軌道の力学的進化に対しても、従来の研究では考慮されてこなかった土星リングの自己重力に効果が大きな影響を及ぼすことが明らかになった。これは、衛星の軌道進化過程に対して重要な示唆を与える結果であり、すでに国際学会1件と国内学会3件で発表を行っている。また、その内容に関して現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度の研究計画として掲げていた、土星衛星形成モデルの構築と数値計算への適用は順調に進めることができた。さらに、数値計算コードの試験的計算として行った、惑星リングとその周りに存在する衛星との重力相互作用の大規模N体計算とその結果の解析によって、新たな示唆を得ることができた。この内容に関しては複数の学会発表と論文の執筆を行っており、順調に進んでいると言える。その他にも、関連した研究を海外の研究者と共同で行っており、その内容も現在論文にまとめている段階である。以上のことから、当初計画していた以上に研究が進展したと言える。しかし、これらの内容は当初の研究計画で予定していた衛星形成過程の数値シミュレーションとは異なるため、その点は問題点として挙げられる。本研究課題を達成するために、研究の軌道修正を進めることが今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、木星氷衛星の観測計画を実行する予定であり、そのデータ解析に注力する予定である。また、観測のプロジェクトと平行して、衛星形成モデルの数値シミュレーションを行う。本研究は理論研究と観測データの比較によって完結するため、両者を滞りなく遂行していくことが非常に重要になる。しかし本年度は、学会の中止や観測機関の停止などが相次いでいるため、計画の実行可能性に関して不安な点がある。観測に関して問題が生じた場合は、数値計算に主軸を置いて研究を進めていく。また、これまでに得られている探査・観測データの再検討を行い、数値計算と比較できる要素を探していくことが必要になると考えられる。
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Research Products
(6 results)