2019 Fiscal Year Annual Research Report
Control of interfacial hydrodynamics with a partially miscible system
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19J12553
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
鈴木 龍汰 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 流体力学不安定性 / Viscous fingering / 相分離 / 部分混和性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、石油回収プロセスでは部分混和系における多孔質媒質内での流体置換現象が重要な役割を演じていることが指摘されている。本研究では、石油回収効率の更なる向上を目指し、私たちが世界で初めて成功させた部分混和系による多孔質媒質内での流体置換実験およびその数値シミュレーションの両方を駆使して、部分混和系を用いた界面流体力学の制御手法の確立を目指す。2019年度は実験が予想以上に展開した一方で、シミュレーションに関しては当初予定していたものより複雑になることがわかり、苦戦している。 実験に関して、不安定の度合いを数値化する手法を確立し、そのプログラムコードを制作、分析し、一つの論文にまとめた。この研究は大学でプレスリリースされ、また日本国内外でのサイトに取り上げられ、世界中から問い合わせがあった。また、3成分系・部分混和系を用いた流体置換実験での論文は投稿し、微修正を加え、現在審査中である。これと同時に、3成分系・部分混和系を用いた流体置換実験に関してさらに部分混和系と完全混和系の遷移領域を研究し、実験結果と分析結果を得た。さらに、流体置換実験ではすでに3成分・部分混和系での流体力学的不安定性を、化学熱力学を用いて安定化する実験に成功した。この結果を国内外の学会で発表し、多くの研究者から意見を求めた。 また、数値シミュレーションに関して、多孔質媒質内での流体置換現象に関するシミュレーションの専門家(インド工科大学 数学科 准教授 Manoranjan Mishra氏)を招聘し、上記目標のために議論した。具体的には、当初予定していた2成分系の部分混和系での流体置換シミュレーションコードを作成し、これを3成分系へと拡張する計画では、本来期待している化学熱力学力であるKorteweg力がはたらかない恐れがあることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに流体力学と化学熱力学の融合分野をいち早く実験し、その成果を学術雑誌および国内・国際の学会発表にて報告した。学術雑誌に投稿した英語論文に関しては、大学でプレスリリースをし、またEurekAlert!などのインターネットサイトにも取り上げられ、これに関する問い合わせも世界中からある。また、実験に関して、2報目の論文を投稿し、微修正を加え、改訂版を現在投稿中である。これは、2020年度初めにアクセプトされる予定である。さらに、これまでの実験の基礎部分に関して、部分混和系ではなく完全混和系で実験を行い、その違いを明確にしている。これに関して、解析ソフトウェアの開発に時間を要した。一方、本年度のもう1つの課題である同実験の数値シミュレーションの確立にむけて、共同研究者を招聘し、一緒にコードの理解・設計を検討中である。このシミュレーション研究において、当初考えていたコードより複雑になることが判明し、予定通りに進んでいない点である。しかし、この点においても、台湾・国立交通大学のシミュレーションの専門家にアドバイスを求め、改善していく予定である。2019年度中はこの約束を取り付けたところである。以上より、実験では期待以上の展開があり、一方でシミュレーションに関して、進捗が若干遅れていることから、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度も実験に関しては継続していく一方で、シミュレーションに主軸を置き、さらに多くの専門家にアドバイスを求め、早急に完遂させることを目指す。実験に関して、新たに実験するのではなく。これまでに得た結果を解析し、論文にまとめる作業としていく。また、シミュレーションを回している間に、実験に関する研究を行っていく方針とする。 一方でシミュレーションに関しては、これまで以上に力と時間を注ぎ、複雑であった部分の解明やその部分に関する知識や技術を専門家に教えていただく。そこで、まず支配方程式に関する論文・文献調査を行い、3成分系での数値シミュレーションに挑むことで指導教員と一致した。さらに、現在、申請者が所属している研究室がもつ、完全混和系における2成分系VFシミュレーションコードでは、カーテシアン座標であること、擬2次元多孔質媒質を用いた流体置換実験では円形幾何であることを考慮し、同時に、極座標でも数値シミュレーションを実施することとした。そこで、台湾国立交通大学のChing-Yao Cheng教授に数値シミュレーションに関して指導していただくべく、お願いし、了承を得た。 以上より、2019年度は流体置換実験では多くの成果を上げ、期待以上の進展であったが、数値シミュレーションに関しては、考えなければならない問題点があり、進捗度合いは期待以下であった。しかし、シミュレーションの専門家を4名(海外の研究者2名、国内の研究者2名)にしたこと、複雑な部分を解明できそうであることから、2020年度末までに当初予定していた研究方針・研究内容を達成できる見込みがある。
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