2019 Fiscal Year Annual Research Report
Sociological Research on How Persons with Disabilities and Persons without Disabilities Can Build Relationship : Focusing on Experiences of Individuals, Social System and Social Movements
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19J12630
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
加藤 旭人 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 社会学 / 障害学 / 社会教育 / 社会福祉 / 社会運動 / 障害者 / 社会調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、障害者と健常者の関係形成の過程を、個人・制度・社会運動の動態的な連関に着目しながら、明らかにすることである。障害者権利条約の批准や障害者差別解消法の施行等によって障害者と健常者の共生社会が目指されるなか、その理念をいかにして実現することができるのか、障害者と健常者の関係性が問われている。 以上の課題のもと、2019年度は、東京都における障害者支援活動と教育・福祉政策の展開についての本格的な調査を行うことである。とくに1990年代の展開に焦点を当てながら、障害者支援団体(X会)へのフィールドワークおよび史資料調査を行った。この作業から、以下の結果を得ることができた。 第一に、1990年代前半までは、学校教育によって引き起こされた変化(学校週五日制の導入)に対して、養護学校の保護者及び教員は、それ以前に存在していた教育運動(就学運動および障害者青年教室)を再編し、限られた資源を社会教育による公的な活動へと結びつけながら、地域活動(X会)を開始することによって対応した。 第二に、1990年代後半以降は、教育領域の縮小と福祉領域の拡大が並存する状況のなかで、地域活動(X会)はそれまで結びついていた学校を離れ、地域社会における独自の活動場所を模索するようになった。そして、社会福祉構造改革によって福祉事業の実施がより広い範囲で認められるようになると、地域活動によって形成されたネットワークから新たな団体が立ち上がり、障害者の生活場所を確保するに至った。 以上の成果によって、第一に、1990年代の東京都における障害者支援活動と教育・福祉政策について実証的に明らかにすることができた。また第二に、こうした実証的な成果によって、障害者と健常者の関係性を、社会政策的な介入と多様な担い手による働きかけのせめぎ合いとして捉える視座が提起された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の具体的な成果は、以下の3点である。 第一に、東京都の教育・福祉・障害者支援活動の展開について、1990年代を中心として明らかにすることができた。とくに、2019年度は、障害者支援団体へのフィールドワークおよび史資料調査に集中的に取り組むことで、この成果を達成することができた。この点は、2019年度の計画において最も重要な点であり、2020年度以降に行う2000年代に焦点を当てた追加調査および本格的な成果報告の基盤を得ることができた。 第二に、これらの調査結果の途中経過について、福祉社会学会および日本社会学会にて報告を行なった。このことを通して、研究の進捗状況を確認するとともに、国内における研究動向を把握しながら、研究交流を行うことができた。 第三に、以上の研究をより広い文脈に位置付けるための作業として、カナダ・オンタリオ州・トロントに滞在し、フィールドワーク(2019年8月28日から9月17日)を行った。具体的には、障害者福祉および障害学研究の国際的な動向を把握するために、現地の障害者支援団体へのフィールド調査およびライアソン大学障害学センターを訪問した。この結果、東京都における教育・福祉・障害者支援活動の展開が、その歴史社会的な背景の違いにもかかわらず、国際的な動向とも概ね合致していたことが分かった。この成果を踏まえて、今後の研究では、トロントの事例を東京に先行する事例として位置付けながら両者を検討することで、東京の事例および本研究をより広い国際的な視野から検討することを目指す。 以上、2019年度は計画通り研究を実施することができ、2020年度における本格的な成果報告の準備を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度については2019年度において得られた成果を基盤としながら追加調査を行い研究成果の充実を目指しながら、本格的な成果報告を行う。具体的には、以下の作業を行う。 第一に、2019年度に行なった東京都多摩地域における障害者支援活動および教育・福祉制度についての調査を継続しながら、2020年度はとくに1990年代後半から2000年代における展開について中心的に明らかにする。 第二に、本格的な成果報告を行う。2020年度の調査を、2019年度に行なった調査の成果と合わせてまとめ、学会報告および論文投稿を行う。具体的には、日本社会学会における学会報告および一橋社会科学への論文投稿を行いながら、研究成果をまとめる。 第三に、以上の研究を国際的な動向と結びつけるために、国外における研究交流およびフィールドワークを行う。具体的には、2019年度に滞在したカナダ・オンタリオ州・トロントを再訪問し、継続した研究交流およびフィールドワークを行う。 以上の計画は、新型コロナウイルスの感染状況に応じて、柔軟に変化させながら、研究を行う。具体的には、必要に応じてフィールドワークをオンラインよるインタビューに切り替える等の対応をとりながら、研究計画を遂行する。
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