2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19J12634
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
大貫 朋哉 同志社大学, 脳科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 神経細胞 / 嗅周皮質 / 神経表象 / 記憶 / 多感覚統合 / 意思決定 / 報酬 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は異なる感覚モダリティの情報から同一の対象を認識することができる。このような認知は、多様な感覚情報をそれらの意味的な共通性に基づいて統合し、記憶することで実現されていると考えられる。解剖学的結合などから、そのような記憶は内側側頭葉に位置する嗅周皮質(perirhinal cortex)の神経細胞の活動により担われていると考えられてきた。しかし、嗅周皮質が実際に多感覚情報を統合しているのか否かについては未だ決定的な証拠がない。 研究初年度にあたる今年度は、既存の設備を拡張する形で、新たに行動実験制御装置と神経活動記録装置を導入しセットアップした。それらの装置を用いて、呈示された視覚刺激と嗅覚刺激に基づいて左右選択を行う行動課題をラットに学習させ、課題遂行中に嗅周皮質から神経細胞の活動を記録し解析した。その結果、個々の神経細胞が呈示された感覚刺激のモダリティ(視覚・嗅覚)に関わりなく、それらが指し示す左右の選択反応(刺激の意味)を符号化していることが明らかとなった。このことから、嗅周皮質は上述のような多感覚情報の意味に基づく統合を担うことが確かめられた。一方で、エラー試行の詳細な解析から、嗅周皮質の神経細胞はそうした記憶情報だけではなく、意思決定や報酬など、当初想定していたよりも多様な情報を柔軟に符号化していることも明らかになった。 並行して、上記のような嗅周皮質の神経活動が課題を遂行上本当に重要であるのかを検討するため、光遺伝学的手法による神経活動操作にも着手した。使用するウィルスベクターの種類や照射する光強度の調整等により適切な実験条件を検討し、次年度での本格的な実施に向けた準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、行動実験および電気生理学的手法による神経活動記録を円滑に行う事ができ、単一細胞上で異なる感覚に由来する情報がどのように表現されるかを詳細まで明らかにすることができた。また、先行研究から、嗅周皮質は主に知覚や記憶を担うことが想定されたが、今年度の研究からは、この領域が意思決定・運動・報酬といった情報まで表現しており、より広範な高次脳機能を担っていることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、行動課題遂行中に嗅周皮質の神経活動を光遺伝学的手法により操作し、その機能を因果的に明らかにする。今年度の結果に基づき、記憶と関連することが示唆された神経活動だけでなく、行動中の多様なタイミングで神経活動を操作することにより、より多面的に嗅周皮質がどのような情報を統合しているのかを明らかにする。
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Research Products
(10 results)