2019 Fiscal Year Annual Research Report
h-BNヘテロ界面を利用したダイヤモンド超高移動度トランジスタの創製
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19J12696
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
笹間 陽介 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / トランジスタ / 高移動度 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイヤモンドは優れた半導体特性を有することから,電子デバイス材料として高い注目を集めている.特に高い移動度は,デバイスのオン抵抗の低減やスイッチング速度の向上に寄与し,デバイスの低消費電力化を可能にする.これまでに研究代表者らは,ゲート絶縁体として単結晶六方晶窒化ホウ素(h-BN)を用いたダイヤモンドトランジスタを作製し,5e+12 cm^(-2)を超える高いキャリア密度領域において300 cm^2/(V・s)を超える高い移動度を得ることに成功している.本研究では,h-BNゲート絶縁体を用いたダイヤモンドトランジスタの更なる高移動度化を目指している. 当該年度は,高移動度化へ向けた指針を得るため,ダイヤモンドトランジスタの移動度の理論計算を行った.この際キャリアの散乱メカニズムとして,表面荷電不純物散乱,背景イオン化不純物散乱,音響フォノン散乱,表面ラフネス散乱の4つを考慮した.移動度の理論計算値と実験値を比較することによって,移動度の律速要因を検討した.その結果,ダイヤモンド表面に1e+12 cm^(-2)程度の荷電不純物が存在し,それらがダイヤモンドトランジスタの移動度を制限する主要な散乱源であることが分かった.さらに,これらの荷電不純物密度を1e+11 cm^(-2)程度まで低減することができれば,4e+12 cm^(-2)以下のキャリア密度領域で1000 cm^2/(V・s)を超える高い移動度が得られることが示唆された.また,4e+12 cm^(-2)を超える高いキャリア密度領域で1000 cm^2/(V・s)を超える移動度を得るためには,表面ラフネスを低減する必要があることも分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに単結晶のh-BNをゲート絶縁体として用いることによって,300 cm^2/(V・s)を超える高い移動度を示すダイヤモンドトランジスタの作製に成功している.そのダイヤモンドトランジスタの移動度のキャリア密度依存性を理論的に解析し,移動度の律速要因を検討した.その結果,移動度を向上させるためには表面荷電不純物密度と表面ラフネスの低減が必要であることを明らかにした.そのため,実験面ではダイヤモンド表面に荷電不純物が吸着することを防ぐためのトランジスタ作製プロセスの構築を行い,それを用いたトランジスタの作製および評価を行った.また,表面ラフネスの低減のためには原子レベルで平坦なダイヤモンドを成長させ,その上にトランジスタを作製することが有効である.そのため,基板上にメサを形成し,その上に低メタン濃度の化学気相成長法を用いて平坦なダイヤモンドの成長を行った. 以上から,おおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
上で述べたように,移動度の理論解析からダイヤモンドトランジスタの移動度を向上させるためには,表面荷電不純物密度及び表面ラフネスの低減が必要であることが明らかになっている.今後はトランジスタ作製プロセスの改良及び,平坦なダイヤモンド上にトランジスタを作製することによって,高移動度化の実現を目指す.具体的には,まずドライエッチングによってダイヤモンド基板上にメサ構造を形成する.低メタン濃度の化学気相成長を行い,メサ上に平坦なダイヤモンドを成長させる.そして平坦なダイヤモンド上にh-BNゲート絶縁体を形成する.h-BNゲート絶縁体の形成には,前年度に引き続き,スコッチテープを用いたへき開と貼り合わせ法を用いる.リソグラフィや蒸着等の微細加工によって電極を形成し,トランジスタを作製する.さらに研究計画に従い,作製したトランジスタが400℃程度の高温でも安定して動作できることを伝達特性及び出力特性測定から実証する.
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