2019 Fiscal Year Annual Research Report
次世代無線通信のための超低計算量な非線形干渉キャンセラ
Project/Area Number |
19J12727
|
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
小松 和暉 豊橋技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 無線通信 / 帯域内全二重 / 干渉キャンセラ |
Outline of Annual Research Achievements |
・IQインバランスと非線形増幅に対処した繰返し推定型非線形自己干渉キャンセラ 高い除去性能と低計算量性を兼ね備えた新しいキャンセラを開発するために,従来から広く研究されてきた並列ハマーシュタイン型キャンセラのモデルを根本から見直した.まず,五つの演算子を用いて無線端末内部で生じる歪みを表現するモデルを考案した.これにより,無線端末内部で生じる自己干渉信号の歪みが簡潔に表現され,自己干渉キャンセラのアルゴリズムの開発が容易になった.次に,この五つの演算子が自己干渉に与える歪みをそれぞれ推定する繰り返し推定型のアルゴリズムを開発した.提案アルゴリズムで学習したキャンセラと従来キャンセラの学習特性の結果より,提案学習方法は従来手法の約16分の1の学習データ量で,従来手法よりも高い除去性能を達成することがわかった.また,提案学習方法に必要な計算量は,従来手法の約10分の1になることがわかった.本成果は無線通信分野のトップジャーナルであるIEEE Transactions on Wireless Communicationsに採録が決定された. ・二次元正規直交基底を用いた非線形自己干渉キャンセラの理論解析 異なるモデルに基づく非線形自己干渉キャンセラの特性を比較するためには,従来まではシミュレーションにより除去特性を比較する方法しかなかった.そこで,シミュレーションより少ない手間と時間でその特性を解析できる理論解析手法の開発は重要である.本研究では非線形自己干渉キャンセラの除去性能を迅速に解析できる理論解析手法を構築した.本手法は複素ガウス分布について正規直交基底となる二次元ラゲール多項式を用いて送受信機の非線形特性を一般フーリエ級数展開し,その係数を用いることでキャンセラの除去性能を解析できる.本成果は2019年6月に開催された電子情報通信学会RCS研究会にて発表した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
帯域内全二重のための低計算量な非線形自己干渉キャンセラの開発という研究課題に対して,本年度は期待以上の研究成果を上げたと評価できる.具体的には,本年度には研究課題である非線形除去と低計算量性を同時に達成するのみならず,学習収束特性も従来手法から改善された手法を開発でき,高く評価できる成果である.また,非線形キャンセラを有する帯域内全二重システムの通信性能が正規直交基底を用いて解析できるという手法を開発した.この成果を応用すると,より低計算量で学習収束特性の良いキャンセラの開発が可能になると考えられる.さらに,この理論解析を応用することで非線形キャンセラを有する帯域内全二重システムの通信性能を向上させるための指針を与えることができる.また,理論解析の拡張についても研究し,増幅器の非線形性のみならず IQインバランスなどの他の非線形性にも対応した解析方法の基礎的成果も報告した.また,研究室内においても積極的に研究指導を行っており,研究指導のもと行われた帯域内全二重や非線形性に関する研究成果も上げている.以上のように,本年度の研究成果は研究課題である非線形キャンセラの低計算量化を達成しつつ,それ以外の課題についても取り組んでおり,期待以上の進展があったといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず,本年度に行った研究成果をより現実的な状況でシミュレーションし,結果を整理する.まとめた結果を論文誌に投稿する.また,帯域内全二重のための低計算量な非線形自己干渉キャンセラの開発という研究課題に対して,さらなる低計算量化と高除去性能化を達成するために,理論的な研究を進める.特に,非線形性を再現して除去するという自己干渉キャンセラは,非線形性の推定問題と捉えることができる.したがって,理論解析から得られた知見を利用して非線形性の推定手法を改善する.得られた結果をシミュレーションと理論の両面から考察し,まとめることで論文として投稿する予定である.また,増幅器の非線形性と帯域内全二重の関連について,さらに研究を進める.
|
Research Products
(12 results)