2019 Fiscal Year Annual Research Report
半値幅の狭い青色蛍光材料を用いた高効率有機EL素子
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19J12776
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
中尾 晃平 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 有機EL / 熱活性化遅延蛍光 / 青色 / 多環芳香族炭化水素 / 分子内水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
青色有機ELデバイスの高効率化に向けて、独自の発光材料を開発することに取り組んだ。飛躍的な高効率化の手法の一つである熱活性化遅延蛍光材料に注目した。貴金属を用いるリン光材料に匹敵する高効率有機ELデバイスを開発することができるこの材料は、スペクトル幅が広いという課題を有している。これを打開するために、剛直、かつ発光量子収率の向上に寄与すると期待できる多環芳香族炭化水素であるトリフェニレンの利用を試みた。トリフェニレンを利用した材料群は合成難度が高く、合成経路が開発されていないことから報告数が極端に少ない。しかしながら、一連の誘導体を開発することに成功した。希薄溶液や固体薄膜の光学物性評価の結果から、スペクトル幅の狭小化を確認した。また、固体薄膜において高い発光量子収率を示し、有機ELデバイスへの利用したところ、素子効率15%を達成し、報告例の少ないトリフェニレン誘導体を世界に先駆けて開発することに成功した。さらに別の手法として、分子内に窒素原子と水素原子との間に生じる水素結合を組み込み、分子構造の緩和を抑制することによるスペクトル幅の狭小化を試みた。先行研究として開発してきたピリミジン誘導体を利用し、一連の誘導体群を開発した。この材料群は深青色発光を示し、さらに高い発光量子収率および狭いスペクトル幅を併せて実現した。深青色有機ELデバイスの高性能化に向けて、これまでに開発してきた発光材料やエキサイプレックスホストなどを利用しているものの、現状高性能化には至っていない。これに関しては、深青色材料に適正な周辺材料の探索や材料開発などを行うことで対応することを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
青色有機ELデバイスの高効率化に向けて、独自の発光材料を開発することに取り組み、スペクトル幅の狭小化に向けて、①合成難度の高いトリフェニレンを利用した一連の誘導体を世界に先駆けて開発したこと、②分子内に窒素原子と水素原子との間に生じる水素結合を組み込んだ一連の誘導体群を開発し、分子構造の緩和を抑制することによるスペクトル幅の狭小化に成功したこと、③開発した材料群は深青色から青緑色発光を示し、高い発光量子収率を実現したこと、④有機ELデバイスの高性能化に向けて、これまでに開発してきた発光材料やエキサイプレックスホストなどを利用することで高性能化のための必要な指針を抽出できつつあること、が理由である。また、想定される課題に対しても臨機応変に対応することができたことも理由の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的であるスペクトル幅の狭い発光材料の開発が概ね順調に進展している現状ではあるが、今後の解決すべき課題の一つはデバイスの高性能化を実現できる周辺材料の選択肢の少なさである。とりわけ、深青色デバイスでは適切な周辺材料の選択肢は非常に少なく、高性能化を実現でき得る材料は限られている。この対応策としてはリン光デバイスで用いられている周辺材料の利用や、これらの誘導体化などが挙げられる。また、発光材料と併せて使用される非発光性材料のフリー化も必要だと考えている。現状では非発光性材料に発光材料を少量添加することで発光特性を飛躍的に向上させる手法を取っているが、これも先に指摘した通り、適切な材料が非常に少ない。そこで、非発光性材料を利用しなくとも高い発光特性を示すような発光材料を開発することは非常に重要となってくる。別の課題としては、デバイスの耐久性が挙げられる。これも高性能化の一つではあるが、デバイスの高効率化とは違い、材料自身の耐久性が非常に重要となってくる。これも使用できる周辺材料が少ないことが課題となっているが、材料の誘導体化などで対応する。
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