2019 Fiscal Year Annual Research Report
鉄触媒を用いた不活性炭素-水素結合切断を経る官能基化反応の開発
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19J12813
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
木村 直貴 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 鉄触媒 / 炭素-水素結合切断 / 芳香族ケトン |
Outline of Annual Research Achievements |
まず研究計画(1)として、鉄触媒による芳香族ケトンのオルト位炭素-水素結合のホモアリル化反応の開発に取り組んだ。炭素-水素結合のホモアリル化は主に、ホモアリルハライドやシクロプロピルメチルハライドのようなハロゲン化アルキルを用いて達成されているが、無置換のホモアリル基の導入に限られる。そこで、メチレンシクロプロパン(MCP)をカップリングパートナーとすることで、多様なホモアリル基の導入が可能になると考え、本研究に着手した。検討の結果、シクロプロパン上にアルキル基やアリール基を有するMCPが本反応に利用できた。そしてエステルやニトリルのような官能基が許容であり、芳香族ケトンとしてアルキルアリールケトンのみならず、ジアリールケトンも適用可能であった。 次に研究計画(2)として、鉄触媒による芳香族ケトンのオルト位炭素-水素結合のアリール化反応の開発に取り組んだ。以前の検討から、N-ビニルインドールをカップリングパートナーとすると、アルキル化生成物に加え、鉄の1,4-転位を経る2-インドリル化が進行することがわかっている。金属の1,4-転位は主にロジウムやパラジウムで知られている現象であり、鉄の1,4-転位についてはこれまでほとんど報告例がなかった。さらに、炭素-水素結合のアリール化は、現在までに様々な手法により達成されているが、1,4-転位を経るアリール化は前例がなかった。そこで今年度は、本反応のさらなる展開を目指し、反応条件の最適化ならびに基質適用範囲の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画(1)では、MCPとのカップリング反応を開発し、基質適用範囲の展開を達成した。そして研究計画(2)では、N-アルケニルインドールを用いたアリール化反応を開発し、学術論文としてAsian J. Org. Chem.誌に発表した。また研究計画(1)と(2)の成果は、国内外の学会発表において高い評価を得ていることからも期待通りに研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画(1)に関しては、MCPとのカップリング反応における基質適用範囲の拡大と反応メカニズムに関する知見を引き続き調査する。そして、新たなカップリングパートナーとして不飽和結合を含む化合物を探索し、鉄触媒独自の反応の創出に挑戦する。さらに、鉄触媒として、多様な配位子を有する低原子価鉄錯体を新たに合成し、既存の手法では実現できなかった反応性の発現を目指す。
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Research Products
(5 results)