2019 Fiscal Year Annual Research Report
任意の生体内物質の濃度変化を高感度に検出するMEMS光干渉型バイオセンサの開発
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19J12825
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
高橋 利昌 豊橋技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ガスセンシング / ケミカルセンシング / バイオセンサ / MEMS / 神経伝達物質 / 分子インプリンティング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 任意の標的分子の検出に向けた光干渉型表面応力センサ上への分子吸着界面の構築およびセンシングの実証を目的として, 前半に気相中のガス分子を, 後半に液中の神経伝達物質の検出を可能とするセンサの製作を行い, 各標的分子の検出実験を行った. 前者に関して, 気相中のガス分子吸着時の応答をより高感度に検出するため, 干渉計の狭ギャップ化によるセンサ応答の向上および可動膜材料の低ヤング率化・薄膜化による表面応力感度の向上を図った. また, 新たに分子吸着層として, 低ヤング率材料のフォトレジスト(PMMA)を導入し, このPMMAおよび可動膜として機能するParyleneの膜厚や分子吸着層の被覆率を最適化することで, 従来構造に対し表面応力感度を2桁以上向上可能な設計とした. 本設計に基づき, 作製した光干渉計は膜の変形を色変化として捉えることができ, サブミクロンスケールの狭ギャップ化を実現することによって, 数十ppm程度のガス分子の検出可能性が示唆された. 後者に関して, 液中の神経伝達物質を検出するため, 新たに分子吸着層として, 分子インプリント膜を導入した. 分子インプリント膜は溶液中において三電極法により, 電位の掃引を繰り返し実行することで, 導電性材料上へ選択的に形成可能である. インプリント材には神経伝達物質のモデル分子としてDopamine(DA)を選択し, 分子インプリント膜内部にDAの鋳型を形成したセンサを製作した. 作製したセンサにおいて, DAを送液した場合とDAを含まないDIWを送液した場合の応答を取得した際, 前者にのみ特異的な応答を取得することに成功しており, 分子インプリント膜により, 濃度数マイクロモル程度の神経伝達物質の検出可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では, 低分子の検出を可能とするデバイス製作および分子修飾界面の構築を異なる手法で実行する予定であった. その過程において, より簡便に製作が可能かつ標的分子のサイズによらない分子修飾界面の構築手法を新規に提案し, 東工大の藤枝先生および防衛医大の太田先生のご指導の下, デバイス製作手法の確立および低分子のモデル分子としてドーパミンを液中で検出することに成功した. また, 製作過程において分子修飾界面にスピンコートで簡易的に形成可能な材料を適用することで, 気相中のガス分子の検出にも応用可能であることを見出した. 市販のガスセンサの検出下限値以下である数ppm程度のエタノールに対し, 有意な出力を得ることに成功している. これらの成果を基に投稿したセンサ分野における最大の国際会議Transducers2019において, 口頭発表(全投稿数の上位10%)に採択され, 学会からも高い評価を得ている. 気相・液相中における低分子の検出を可能とするセンサの製作手法の確立とセンシングの実証に関して, その両者を1年で達成できた点を踏まえ, 概ね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度考案した神経伝達物質の検出に向けた分子修飾界面の構築手法に基づき, 界面構築を施した機能膜を構造体に転写したMEMSセンサを作製する. 標的分子のモデル分子として, ドーパミンを選択し, ドーパミン送液下におけるMEMSセンサの応答を分光測定により取得する. 加えて, コントロールデータとして, セロトニンやアドレナリン, ノルアドレナリン送液時の応答を同様に取得し, 標的分子に対する選択性および濃度の増減によるセンサ応答の可逆性を評価する. この実験と並行して, FT-IRやラマン分光装置等による分子吸着前後におけるセンサ表面の組成分析を行い, 吸着分子の定量評価を行う. 上記の実験により, 神経伝達物質の検出に対しセンサの有効性が確認され次第, ソースフォロワ回路を形成したチップ上へ, 上記の実験で使用したものと同様の機能膜を転写するためのプロセス工程を確立する. 機能膜を転写したMEMSセンサへ, ドーパミンを送液し, 標的分子由来の応答を電圧信号として取得する. 以上の課題遂行により, MEMSセンサの最小検出限界およびダイナミックレンジを評価し, 濃度1 nMのドーパミン検出を実証する.
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Research Products
(6 results)