2019 Fiscal Year Annual Research Report
超大規模電磁場解析を実用化するエクストリームスケールコンピューティング
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19J12838
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
桝井 晃基 名古屋大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 複素数高精度演算 / 反復法 / 大規模電磁場解析 / 前処理 / 高速化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,辺要素有限要素法による時間調和渦電流解析や高周波電磁場解析で現れる大規模複雑な複素対称線形方程式の求解を高速化することを目的として,最初に高精度計算に着目し,倍々精度数複素数演算を実装し,倍精度と倍々精度の混合精度演算を含めた複素数高精度演算を用いた反復法による解析システムを提案した. 以下に本研究で取り組んだ内容について述べる. まず高精度演算における研究経過について,これまでQD library などさまざまなライブラリで多倍長精度複素数演算は実装されているものの,その計算速度は明らかではなかった.そこで今回,C言語による複素数倍々精度演算を実装し,一般に広く使われている QD libraryとlibquadmathを用いて性能の比較を行った.その結果,今回本研究にて実装した in-houseコードが多倍長精度演算の中で最も高速であるということが明らかになった.さらに,複素数向けの効率的な演算手法を提案し,実装したことにより,精度を落とすことなくさらなる高速化に成功した.このことから,既存のライブラリなどと比較して,高性能な倍々精度複素数の計算基盤の構築に寄与した. 次に,高精度演算を用いた反復法について,倍精度を用いて解くことができる問題に対しても、倍々精度演算を用いる事で高速化に成功した.さらに,100 万自由度を超える大規模問題に対しても反復法の性能評価を行い,その有用性を示した.大規模問題向けに並列化や最適化を行い,問題に適用した結果,現実的な問題に対しても有用かつメモリ消費量的にも実用的であることを示し,大規模電磁場解析のシミュレーション時間短縮に寄与した. さらに反復法の前処理手法について,今回対称線形方程式向けの新しい前処理手法を提案・実装し,性能評価を行った.その結果,電磁場問題において有効であるケースを確認し,高速化に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複素数の高精度演算(倍々精度演算)の実装については,QD libraryなど多数の数値計算ライブラリにおいて公開されているものの,その性能について完全に明らかとなっているわけではない.さらに,複素数の倍々精度演算においては,その最適な計算手法の確立が不十分である.この問題に対して本研究では,C言語を用いて複素数向けに演算の最適化を行い,計算時間の短縮に成功した.その結果として,高速な複素数倍々精度演算の計算基盤の構築に寄与できた. 本研究成果の高精度演算を活用して反復解放に実装したところ,従来の倍精度演算による電磁場解析問題の実行時間に対して計算時間を短縮できることを明らかにした.さらには,電磁場解析向けに反復法の新しい前処理手法を開発して実装,性能評価を行うことで,提案実装方式の有用性を示すことが出来た. これらの成果は学術上の新規性のみならず,実用性も認められるものである.このことから,本研究は期待通りに進展したと判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
現在高精度ライブラリとしてQD libraryなどがあげられるが,これを元にした高性能な高精度ライブラリの開発を行う. 例えばこのライブラリは高精度複素数と倍精度複素数の混合計算があるが,高精度複素数と倍精度実数の混合計算など,すべての種類の混合精度には対応しておらず,実装されていない機能があったり,計算効率という点からみても無駄な計算をしたり,並列化が不十分な部分がある.高速な複素数演算手法自体はすでに実装しているため,これらを並列化問題向けに最適化するようなパッチとして公開することで,ライブラリの性能を向上させるとともに,機能も充実させていく.また,この時の計算速度や計算精度についても評価を行っていく.単精度や半精度についても同様にライブラリの機能として追加する予定である. また,超大規模電磁場解析において,これまで有効であった混合精度反復法を実際に適用する.自由度数億を超える超大規模問題に対しては,領域分割法を組み込んだうえでの性能評価を行っていく.さらに,高速な高精度計算システムを用いた反復法を実装することで,高速かつ高安定な求解システムをし,大規模電磁場解析向けに最適化を行う.さらに有効性を確認したのち,大規模電磁場解析に使われ,OSSとして公開されているADVENTURE_Magneticなどの追加機能としてソフトウェアを開発していく. 複素数の単精度や半精度演算についても,同様に計算基盤および反復法ソルバを開発し,さまざまな分野の行列に対して適用することで,その有効性について検討していく.有効であったものについてはソルバという形で公開していく.
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Research Products
(6 results)