2019 Fiscal Year Annual Research Report
Fabrication of Polyrotaxane Nanosheet: Exploration of Formation Mechanism and Applicability
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19J12840
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上沼 駿太郎 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | シクロデキストリン / ブロックコポリマー / ナノシート / 超分子 / 自己組織化 / 結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
異方性材料として近年注目を集めているナノシートは、通常、無機鉱物結晶から成る。ごく最近我々は、環状のオリゴ糖であるシクロデキストリンと高生体適合性ポリマーの超分子集合から成るナノシート材料"擬ポリロタキサンナノシート"の創製に成功した。ナノシート材料は標的物への接触面積が大きく、非常に強く付着することが知られている。生体安全性の高い擬ポリロタキサンナノシートは、高付着性を有する新規ドラッグデリバリーシステムへの応用が期待できる。昨年度は、擬ポリロタキサンナノシートのジオメトリー(厚さ・横サイズ・形状)を試みた。そして、αシクロデキストリンを用いた場合、直鎖状軸高分子の鎖長を変えることで16 nmから36 nmの範囲で厚さの制御が可能であった。さらにγシクロデキストリンを用いた場合、厚さは30 nmから50μm程度まで制御可能であった。またシクロデキストリンの種類を変えることで六角形・ひし形・正方形の形状が実現可能であった。形状だけでなく、ナノシートを形成するために必要な軸高分子の分子設計について、軸高分子の化学構造を系統的に変えて擬ポリロタキサンナノシートを作成し構造解析をすることで調べた。そして、擬ポリロタキサンナノシートを形成するためには、軸高分子の両末端(または両端のセグメント)がシクロデキストリンに包接されないことが重要であることがわかった。そのためには、シクロデキストリンとの会合定数の小さい官能基を両末端に付与や、分岐点の導入などが有効である。昨年度は、擬ポリロタキサンナノシートの形状制御に成功しただけでなく、形成するための軸高分設計の条件も明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
超分子集合による高次構造体形成において、構造体が大きくなればなるほど、形成における分子ダイナミクスの解明は極めて困難となる。擬ポリロタキサンナノシートは超分子集合から成るが、その際に分子がどのように組みあがっていくか、詳細な描像はいまだ明らかになっていない。分子の組織化過程が明らかになっていないため、最終的に形成される高次構造体のジオメトリー制御において、様々な問題が生じると予想していた。実際、当初は軸高分子鎖長を変えることによって擬ポリロタキサンナノシートの厚さが系統的に変化していくと予想していたが、系統的に変化しないという問題が生じた。しかし、使用する軸分子鎖長の範囲を広げたところ、分子量2000から6000の範囲内でのみ、擬ポリロタキサンナノシートの厚さが系統的に変化するということが見出された。この範囲外の分子鎖長の軸を使用した場合、マイクロメートルオーダーの極めて厚い構造体ができるか、非常に乱れた無定形構造体が形成される。 分子鎖長がある特定の範囲内にあるときのみ、ナノシート構造体が形成するということが見出された。この知見が得られてから、最初は1種類のシクロデキストリンを用いて作成していた擬ポリロタキサンナノシートは、汎用性のあるα・β・γシクロデキストリンいずれの場合にも形成可能であることもわかった。そして、シクロデキストリンの種類によって異なる形状の高次構造体が形成されるということも付随的に見出された。以上の様に、一度は計画達成が困難とも思われた研究であったが、使用する軸高分子量の分子量範囲を変えることで問題を解決することができ、この時得られたナノシート構造が形成する場合と形成しない場合があるという知見から、本研究はさらなる展開を見せた。以上のことから当初の計画以上の進展があったと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
擬ポリロタキサンナノシートのジオメトリー制御ついて、その大枠を明らかにすることができた。厚さは軸高分子の鎖長を変えることで制御できる。一方で、環境変化を与えた場合の動的な構造変化についてはいまだに知見が得られていない。擬ポリロタキサンナノシートはシクロデキストリンとポリマーとの超分子集合から成り、形成反応と分解反応が平衡状態にあるためにその構造を保っている。したがって、希釈や加熱などにより、高次構造は分解すると予想される。このような動的構造変化挙動の解明はドラッグデリバリーシステムとして応用する際には極めて重要なパラメータであり、例えば実用化に際してドラッグのキャリアは、部位にもよるが、例えば二週間程度をかけてゆっくりと分解していくことがコスト的・副作用的観点から好ましい。今後、擬ポリロタキサンナノシートの動的構造変化挙動を明らかにする。 同時に、生体材料への付着性についても明らかにする。生体材料として、豚皮や豚眼、コンタクトレンズ、植物の茎・葉、人間の皮膚などを計画している。これらの材料に擬ポリロタキサンナノシートを付着させ、走査型電子顕微鏡や原子間力顕微鏡などにより、付着量及び付着の際の擬ポリロタキサンナノシートの構造変化(屈曲など)を観察する。ドラッグデリバリーシステムとしての応用を見据えた研究を進める予定である。
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Research Products
(13 results)