2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19J12844
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石田 雄大 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 乳房外パジェット病 / エクソームシーケンス |
Outline of Annual Research Achievements |
乳房外パジェット病(EMPD)は国際的には珍しい皮膚がんである。海外での頻度は人口10万人当たり毎年0.1-2.4人と報告されている。EMPDの病因、治療ターゲットの知見は極めて乏しい。現在知られているEMPDのゲノムに関する知見は、ERBB2増幅、RAS/RAF経路の変異にとどまる。 がんの体細胞変異の多くはランダムに生じたパッセンジャー変異であり、病態に本質的なドライバー変異の決定が望まれる。EMPDの頻度が高いとされる本邦では、大規模な患者コホートの集積し、EMPDの発がんのドライバーを決定できると期待される。以上を踏まえ、本研究は以下を目的として研究を実施した。1) EMPDのドライバー変異の決定、2) ドライバー変異ががんを発生、維持する機構の解明 まず、手術検体を用いたエクソームシーケンスの実験を行った。既存の20症例に加え、19症例より手術検体と血液のペア検体を解析した。2例のデータは品質に問題があり破棄した。合計37検体の変異ランドスケープを観察すると、ERBB2増幅に加え変異の頻度も高いこと, CUX1欠失、KMT2Cの機能喪失型変異の頻度が高いことが明らかとなった。 病理像からも明らかであったが、乳房外パジェット病の腫瘍コンテンツは低く、エクソームシーケンスのフィルター条件の検討を要した。エクソームシーケンスで採用した変異のアンプリコンシーケンスを行い、バリデーションを行うこととした。8症例から399の変異をランダムに選抜し、対応する798のプライマーを設計しアンプリコンシーケンスを行った。 343のローカスの評価が可能であった。VAF = 0.02を閾値とすると335/343 (97.7%)の変異が確認できた。本実験系において、かなり腫瘍コンテンツが低いサンプル(約5%)でも変異を正確に検出できていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エクソームシーケンス: 既存の20症例に加え、19症例より手術検体と血液のペア検体を入手した。DNeasy Tissue & Blood kit (Qiagen)でDNAを抽出し、SureSelect XT (Agilent)でライブラリを作成、SureSelect Human exome V6でターゲットエンリッチメントを実施した。ライブラリはHiseq 2500 (illumina) でシークエンス反応を行った。Bcl2fastqでfastqファイルを生成、アラインメント、変異コールをGenomon 2.0 パイプラインで行った。合計37検体の変異ランドスケープを観察すると、ERBB2増幅に加え変異の頻度も高いこと, CUX1欠失、KMT2Cの機能喪失型変異の頻度が高いことが明らかとなった。 アンプリコンシーケンス: 病理像からも明らかであったが、乳房外パジェット病の腫瘍コンテンツは低く、エクソームシーケンスのフィルター条件の検討を要した。エクソームシーケンスで採用した変異のアンプリコンシーケンスを行い、バリデーションを行うこととした。VAFが高い・低い、変異数が多い、少ない症例を均等に8症例選抜し、各症例から55変異をランダムに選抜し、399の変異に対する798のプライマーを用いてアンプリコンシーケンスを行った。 各ローカスあたりのdepthは平均4280と十分なデータ量を得られた。腫瘍と正常コントロールで最低200以上のdepthをとれたローカスを評価の対象とした。評価可能な343のVAFを腫瘍(赤)、正常(緑)で示す。腫瘍と正常で明瞭なシグナルの分離が見られた。VAF = 0.02を閾値とすると335/343 (97.7%)の変異が確認できた。本実験系において、かなり腫瘍コンテンツが低いサンプル(約5%)でも変異を正確に検出できていることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
エクソームシーケンスのデータを元にドライバー変異の候補のリストを策定した。サンプル数を増やしてドライバー検出の感度を高めるためのターゲットシーケンスのパネルを設計した。パネルに入れる条件として、1. MutSigCVでq value 0.1以下の遺伝子、2. 2020plusでq value 0.1以下の遺伝子、3. dndscv でq value 0.1以下の遺伝子をまず選定した。次に、3症例以上に変異を認める遺伝子(コホートの7.5%以上)も対象として加えた。さらに、以上のリストに含まれた遺伝子のファミリー遺伝子(例:ERBB3に対するEGFR, ERBB4)も加えた。ターゲットパネルをAgilent SureDesignでデザインした。 このパネルを用いてターゲットシーケンスを行うために、EMPDのパラフィン検体を100例を目標に収集を進めている。また、集取したパラフィン検体からマクロダイセクションによるDNA抽出を進める。Agilent SureSlect XT low inputでライブラリーを生成しIllumina HiSeq 2500でシーケンスする予定である。これらのデータを元に正の選択を受けた変異を同定し論文発表する予定である。
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