2019 Fiscal Year Annual Research Report
Amide-Selective Nucleophilic Addition: Application to Back-Bone Modification of Peptides
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19J12874
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高橋 芳人 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | アミド / ペプチド / ヒドロシリル化 / 求核付加反応 / ペプチド主鎖修飾 / イリジウム / シラン還元剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
アミド結合はタンパク質をはじめとする様々な化合物を形成する重要な結合である。近年、創薬研究開発において基質特異性や製造コストの観点からペプチド医薬品に注目が集まっており、アミド結合への関心は一層高まっている。任意のアミノ酸同士を繋ぎ合わせる『アミド結合形成反応』が精力的に研究される中、ペプチド中の任意のアミド結合に対する『アミド結合変換反応』の研究は遅れている。本変換ができれば、ペプチドの物性・生物活性が変化し、代謝安定性・細胞膜透過性・薬理活性等の向上が期待される。すなわち、既存の生物活性ペプチドに新たな付加価値を付与できると考え、位置選択的なアミド基変換反応の開発を目的とした。 ペプチド中のアミド結合変換反応の開発が遅れている要因の一つとして、ペプチドが類似構造の繰り返しにより構成され、反応点を1つに絞るのが困難な点が挙げられる。そこで、アミド窒素上の置換基に着目し、置換基ごとに反応性が異なれば、アミド基間の区別化ができると考えた。本問題の解決に当たり、第三級アミド、N-メトキシアミド、第二級アミドそれぞれに対して、高い選択性を示す穏和な還元的な求核付加反応を開発した。続いて開発した反応を元に、位置選択的なアミド基変換反応が可能な触媒系を探索した。 多くのペプチドが第二級アミドで構成される点に着目し、第三級アミド選択的な反応を設計した。第三級アミドは第二級アミドよりもLewis塩基性が高いため、イリジウム触媒のLewis酸性を添加するホスフィン配位子により調整し、第三級アミド選択的なヒドロシリル化を実現した。本反応は、第二級アミド、カルバメート、エステル基共存下において高い第三級アミド選択性を示した。また、ヒドロシリル化後に生じるエナミンを適切な求核剤と酸で処理するとエステル基を始め種々の官能基の導入ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、新規触媒系の開発によりペプチド主鎖修飾を達成した。ペプチドは複数のアミド基を有しているため、任意のアミド基選択的な還元が困難である。本問題の解決に当たり、多くのペプチドが第二級アミドで構成される点に着目し、第三級アミド選択的な反応を設計した。第三級アミドは第二級アミドよりもLewis塩基性が高いため、イリジウム触媒のLewis酸性を添加するホスフィン配位子により調整し、第三級アミド選択的なヒドロシリル化を実現した。本反応は、第二級アミド、カルバメート、エステル基共存下において高い第三級アミド選択性を示した。また、ヒドロシリル化後に生じるエナミンを適切な求核剤と酸で処理するとエステル基を始め種々の官能基の導入ができた。本内容で国際学会にてポスター発表を一回行い、また学術論文誌に報告予定である。 以上の実験結果および研究成果より、期待通り研究が進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
新規触媒系の開発により、新規ペプチド主鎖法を確立した。本反応は、第三級アミドのヒドロシリル化、N,Oアセタールのイミニウムイオンへの変換、イミニウムイオンに対する求核付加反応によって進行する。第二級アミド共存下における第三級アミド選択的な還元的求核付加反応が進行し、アミドカルボニル基の除去とエステル基の導入に成功した。今後は、ヒドロシリル化の際に添加するホスフィン配位子の置換基効果を精査し、反応に用いる基質ごとに適したホスフィン配位子を探索する。また、求核付加反応によって導入ができる置換基が限られているため、求核付加反応の条件を検討し利用可能な求核剤の種類を増やす。導入する置換基の候補としては、クリック反応に応用可能なアルキン、ステイプルペプチド合成に重要なアルケン、ペプチドの配座固定に効果が期待されるシクロプロパン等が挙げられる。また、既存の生理活性ペプチドの修飾を行い、得られた主鎖修飾ペプチドの活性評価も行う。
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Research Products
(3 results)