2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19J12876
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 伸高 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 計算量 / ランダムグラフ / 合意モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多項式時間で解ける問題に対する精緻なパラメタ化計算量を解明することである。そのために帰着を与える際、「どのような入力が最も解きにくいか」を考察することが肝心である。そこでまず、グラフ上の問題に着目し、ランダムグラフ上ではどのような計算複雑性を持つかを議論し、以下の成果を得た。
1. 固定サイズの完全二部グラフの数え上げ問題の精緻なパラメタ化計算量下界を強指数時間仮説の下で与え、この下界がタイトであることを示した。更に、ランダム二部グラフが最も「解きにくい」入力であることも示した。具体的には、ランダム二部グラフ内に含まれる完全二部グラフを数え上げるアルゴリズムが存在するならば、ほぼ同程度の計算時間で動く、任意のグラフに対してそれに含まれる完全二部グラフを数え上げる乱択アルゴリズムが存在することを示した。
2. ランダムグラフ上の分散合意モデルの解析を行い、相転移現象を明らかにした。分散合意モデルではネットワーク上の各ノードが意見を持ち、何らかの共通のプロトコルに基づき意見を更新し最終的には全ノードが同一の意見を持ち合意に至ることが目的である。合意に至るまでにかかる時間が早くなるようなプロトコルを設計することが肝要である。本研究では二つのコミュニティを持つ確率的ブロックモデルと呼ばれるランダムグラフ上での合意時間の解析を行い、コミュニティ間の結合の密度が閾値より高ければ非常に高速に合意に至る一方、閾値より低ければ指数時間かかることを証明した。この結果はInternational Symposium on Distributed Computing (DISC19) に採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ランダムグラフの計算複雑性に関する二つの成果を挙げることができた。前者の成果は完全二部グラフ数え上げ問題に対する新たな帰着を与えており、この帰着とランダム自己帰着と呼ばれるテクニックを組み合わせることで得ている。後者の成果は本質的には確率集中不等式を用いてランダムグラフの構造を解析したものであり、この解析技法は他の合意モデルの解析に応用できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、ランダムグラフの計算複雑性を議論していく。
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