2019 Fiscal Year Annual Research Report
自閉スペクトラム症者の“かわいい”感情に関する研究:教育実践効果に着目して
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19J12908
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大野 愛哉 九州大学, 人間環境学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 発達障害 / かわいい / ベビースキーマ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,自閉スペクトラム症(以下,ASD)者の“かわいい”認知のもたらす効果・有用性を検討することにより,“かわいい”認知のASD者支援の適用可能性について検討することを目的としていた。 ASD者の“かわいい”の有用性を検討するに先立ち,定型発達者における“かわいい”の有用性について検討を行った。先行研究において,人間や動物の赤ちゃん(ベビースキーマ)に対して感じる“かわいい”には,集中力や慎重さ・視覚的注意を向上させるといった効果がある(Sherman et al., 2009など)ことが示されている。そこで,本研究においては,「ベビースキーマを持たない“かわいい”もの」が集中力・慎重さ・視覚的注意に与える影響について定型発達者80名を対象に検討した。その結果,調査協力者個人が“かわいい”と思うものの呈示により集中力・視覚的注意が向上することが示され,個人が選択したかわいいものの呈示による認知的有用性が示唆された。 さらに,ASD者を対象とし,ASD者における“かわいい”認知について,視線に着目し検討を行った。本研究では,ASD者16名TD者24名を対象にベビースキーマ度を操作したヒトの赤ちゃん・子犬・子猫の画像を呈示し,かわいさ評定および視線分析を行った。その結果,ASD者はベビースキーマ度とかわいさ評定に相関は見られなかったものの,自身が” かわいい”と評価した画像ではTDと同程度顔の中心部(目)をよく注視していることが示された。本結果により,ASD者は“かわいい”と認知した際に視線の動きが変化することが示唆され,ASD者支援に“かわいい”を適用するための重要な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,対面での実験や学会参加による知見の収集ができず,データ収集や成果発表が滞ってしまった。そのため,研究計画を遅らせ,翌年度に繰り越すことを余儀なくされた。しかしながら,研究のデザインや研究実施順を入れ替えることで対応した。当初の計画以上の研究の進展は得られなかったものの,おおむね順調に研究が進展したと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,ASD者の“かわいい”の有用性について更なる知見を得るため,これまでの調査協力者の中から“かわいい”ものを日常的に使用しているASD者を選定し,個別事例の検討を行う。これにより,より臨床的な知見を得ることを目指すこととする。なお,新型コロナウイルスの蔓延により,対面での継続的な面接は困難であることが予想されるため,調査は全てオンラインにて実施する。
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