2019 Fiscal Year Annual Research Report
微細磁気トンネル接合の直接的かつ多角的評価によるスピントルク磁化反転の統一的理解
Project/Area Number |
19J12926
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
五十嵐 純太 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 磁気トンネル接合 / スピントロニクス / 形状磁気異方性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は市場化が目前となっている磁気抵抗メモリの中核を担う、2つの強磁性層で絶縁層を挟んだ構造である磁気トンネル接合の磁化反転について、様々な方法を用い、磁化反転 (片方の強磁性のN/Sの方向が変化するので書き込み動作に相当) における統一的な理解の構築を目指すものである。本年度は、低温から高温といった広温度範囲での微細磁気トンネル接合の磁化反転の評価を行った。従来磁気トンネル接合 (MTJ) は室温での研究に主眼が置かれていた。そのため本研究により広温度範囲において微細MTJの磁化反転に関する理解が深まれば、超伝導スーパーコンピュータから自動車用途などより応用の可能性が広がる。 まず直径の異なるMTJについて、様々な温度 (5 Kから室温程度まで) で磁化反転磁界の印加磁界角度依存性の測定を行った。異なる直径 (20から80 nm程度) を有する微細MTJについて、温度を変えて反転磁界の印加磁界角度依存性の測定から磁化反転モードの評価を行った。サイズの大きいデバイスは150 K付近を境に振る舞いが変化することを見出し、温度と磁化の振る舞いの空間的不均一性の関係を明らかにした。 次に高温領域での微細MTJの不揮発性の温度依存性を調べた。しかし高温で高い不揮発性を示す微細MTJを実現することは容易ではなく、現在主流となっている界面の効果を利用した界面磁気異方性MTJで十分な不揮発性を維持しつつ微細化できる限界サイズは室温でも20 nm程度である。そこで本研究では、従来の界面磁気異方性MTJで埋もれていた形状の効果を利用した形状磁気異方性MTJを用いることで、190℃でも不揮発性を維持する直径20 nm以下のMTJを作製し、その不揮発性の温度依存性を調べ、高温での磁化制御に関する知見を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、MTJの磁化反転に関して様々な手法により統一的な理解を目指すものである。本年度は、低温から高温という広温度範囲において微細MTJの磁化反転の評価を行い、温度、サイズの効果が磁化反転に与える影響を明らかにした。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は最終年度である。そのため令和元年度に得られた結果に関して論文を執筆する。その後、形状磁気異方性を利用した極微細MTJの電流誘起磁化反転の評価を行い、従来の界面磁気異方性MTJにおける理論の形状磁気異方性MTJへの適用限界を明らかにする。以上の結果を通して微細MTJの磁化反転の統一的な理解を試みる。また、得られた結果については、国際学会ならびに国内学会にて発表し、成果を社会へと還元する。
|