2019 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトインフルエンザウイルスに対するユニバーサルワクチンの作出
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19J12963
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
濱端 大貴 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / ユニバーサルワクチン / ヒトモノクローナル抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で、主要抗原部位にランダムなアミノ酸変異を持つHA発現プラスミドおよびこれらのHAを持つウイルスライブラリを得ているが、これらのHAを全て免疫原として使用するのは技術的に難しい。そのため、これらのHAの中から、免疫原として用いるべき有望なものを選抜する必要がある。その際、様々なエピトープに結合するヒトモノクローナル抗体を用いて、主要抗原部位のエピトープが消失し、かつ保存領域のエピトープは残存しているようなHAを選ぶ必要がある。そこで、本年度は、この選抜に必要となる抗体の準備を行った。様々なヒトモノクローナル抗体を用いて、交叉反応性やエピトープを調べた結果、これまでに報告のない幅広いインフルエンザウイルスに共通するエピトープに結合するヒトモノクローナル抗体を見出すことができた。この抗体は、H1亜型からH18亜型までの全ての亜型のインフルエンザウイルスのHA蛋白質に結合することが分かった。また、季節性インフルエンザウイルスであるH1およびH3亜型ウイルスだけでなく、高病原性のH5亜型ウイルスとH7亜型ウイルスに対しても感染防御活性を示すことが分かった。更に、この抗体のHI活性および膜融合阻害活性、ウイルス放出阻害活性、ADCC活性を調べたところ、これら全ての活性を示すことが分かった。これまでに報告のある、HA蛋白質の保存領域に結合する多くの抗体は、膜融合阻害活性やADCC活性を示すものの、主要抗原部位に結合する抗体と異なり、HI活性を示さない。一方で、今回新たに見出したエピトープに結合する抗体は、主要抗原部位に結合する抗体と同程度の高い感染防御活性を、保存領域に結合する既報の抗体と同程度の幅広い交叉反応性を併せ持つ抗体であることが明らかとなった。このような抗体のエピトープを標的とした免疫原を作出することができれば、有望なワクチンとなる可能性が高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現行のインフルエンザワクチンは、ウイルスの変異で効果を失ってしまったり、昔の流行株に対する抗体を誘導してしまったりするという問題を抱えているが、これらの問題を解決できるような免疫原の開発を目指して、様々なアプローチで取り組んでいる。 本年度は、様々なヒトモノクローナル抗体の交叉反応性やエピトープを調べた結果、幅広いインフルエンザウイルスに共通するこれまでに報告のないエピトープに結合するヒトモノクローナル抗体を見出すことができた。この抗体は、季節性インフルエンザウイルスであるH1亜型ウイルスおよびH3亜型ウイルスだけでなく、高病原性のH5亜型ウイルスとH7亜型ウイルスに対しても感染防御活性を示すことが分かった。このような抗体のエピトープを標的とした免疫原を作出することができれば、有望なワクチンとなる可能性が高いと考えられる。そこで、現在はこの抗体が感染防御活性を示すメカニズムを詳細に調べるため、引き続き研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、免疫原として用いるべき有望なものを選抜するために必要なヒトモノクローナル抗体を取得した。このモノクローナル抗体は、これまでに報告のないユニークなエピトープに結合することで、主要抗原部位に結合する抗体と同程度の高い感染防御活性と、保存領域に結合する既報の抗体と同程度の幅広い交叉反応性を併せ持つことが分かった。このような抗体のエピトープを標的とした免疫原を作出することができれば、有望なワクチンとなる可能性が高いと考えられる。そこで、次年度は、この抗体の詳細な性状解析を進めつつ、この抗体のエピトープを含む保存されたエピトープが残存しており、かつ主要抗原部位のエピトープが消失しているようなHAを選抜していく予定である。
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