2019 Fiscal Year Annual Research Report
Volumetric molecular vibrational imaging with mid-infrared photothermal diffraction tomography
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19J12981
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
玉光 未侑 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 非標識イメージング / 定量位相イメージング / デジタルホログラフィ / 光回折トモグラフィ / 分子振動イメージング / 中赤外イメージング / フォトサーマルイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
生命科学や医療分野の研究において、試料に対する染色や標識を必要としない非標識イメージングは、非破壊性や低毒性が必須となる再生医療などのさまざまな場面において重要である。近年、分子の固有振動を検出することで対象の網羅的な分子情報を得る分子振動イメージングや、屈折率分布によって生じる光の位相遅れを検出することで対象の網羅的な形態情報を得る定量位相イメージングなどの、非標識イメージング技術が活発に研究されている。しかし、これらの技術には、各々で相補的な情報しか得られないことや、高感度計測を行うために用いる高強度超短パルスレーザー光によって細胞が死滅してしまうなどの問題点が存在する。
本研究では、従来技術よりも低毒性、高感度、高空間分解能な分子振動選択的定量位相イメージング技術の開発を行う。本技術では、分子振動の基準周波数に相当する中赤外光を用いて試料に分子振動選択的かつ局所的に中赤外光の吸収とそれに伴う屈折率変化(フォトサーマル効果)を起こし、これを可視光に基づいた定量位相イメージング技術で検出することで、非標識、分子選択的、高感度かつ低毒性なイメージングを達成する。また、構造化照明を用いた定量位相イメージングを利用し、従来の分子振動イメージングを超えた空間分解能を目指す。
本年度は、上述する中赤外フォトサーマル定量位相イメージング系の構築と原理検証を行った。開発した系で、既存のフーリエ変換赤外分光装置と同等の赤外吸収スペクトルの情報を取得できることを示した。また、COS7やHEK293などの培養細胞の観察を行った。具体的には、赤外フォトサーマル効果を用いることで、タンパク質のペプチド結合に由来するアミドバンドと呼ばれる特徴的な赤外吸収スペクトルの信号を得ることに成功し、定量位相画像と比較することで、その信号が細胞内の核小体などの器官に選択的に局在する様子を観察することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
中赤外フォトサーマル定量位相顕微鏡の構築と原理検証、および、それを用いた生体イメージングの実証に成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した中赤外フォトサーマル定量位相イメージング装置の高性能化を行う。具体的には、より高い開口数を持つ対物レンズを実装するなどして、空間分解能を向上させる。また、新たに中赤外光源を開発することで、検出感度の向上と波長掃引可能な中赤外領域の広帯域化を行う。
本技術によって得られる赤外分光に基づく分子情報と屈折率に基づく形態情報の相互相関解析を行うことで、生命科学や医療の研究における新たな画像解析法の開拓を行う。
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