2019 Fiscal Year Annual Research Report
有用な養殖用餌料候補であるクリプト藻類の培養安定性向上に向けた研究
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19J13027
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
山本 慧史 三重大学, 生物資源学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 新たな餌料価値判断基準の提示 / 培養最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,今後有用な養殖用餌料生物として活躍が期待される,クリプト藻類Rhodomonas sp. Hf-1株において,その培養中に発生する細胞色の緑変現象の発症機構の解明,緑変からの回復方法の考案を目的としている。本年度は,緑変が与える餌料価値への影響を評価すべく,実験室規模での培養試験,生化学成分分析を実施した。また,本株の種同定を目的とした遺伝子解析試験を実施した。 18S-rRNA,16S-rRNA,ITS領域などの複数の遺伝子領域をPCR法により解析した結果,本株はR. salina (HE820923)と高い相同性を示した。一方で,同クレード内に複数の属名が入れ子状態になるなど,先行研究で報告されている属レベルでの分類学的混乱が同様に確認された。無機態窒素源について濃度勾配を設けた培地で本株を培養したところ,窒素欠乏区において赤色色素Phycoerythrinの有意な減少が確認された。また,これに伴い細胞内のタンパク質量,高度不飽和脂肪酸量も減少した。このことから,クリプト藻類はPhycobiliproteinを窒素リザーブとして利用しており,環境中の窒素減が枯渇した際にPhycobiliproteinを自己分解,生存のための窒素源として利用する過程で,藻体のタンパク質量が減少する機構が示された。この特性は,1. 外部環境で藻体のタンパク質量を制御可能である,2. 細胞色から餌料価値評価が可能である,といった餌料用微細藻類として有用かつこれまで類をみない利点であると評価された。本件に関わる研究成果は,それぞれ著名な国際誌に英語論文として2報が投稿,受理されており,多くの研究者から高い関心を集めていることからも,本研究の重要性が裏付けられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発現量解析すべき窒素源取り込みに関わる遺伝子領域について,詳細な文献調査を行った結果,当初予定していた領域数よりも多くなることが想定された。しかしながら,共同研究先であるゲント大学での研究実施を一年前倒しで行い,またこれについて当初計画していたよりも多くのデータが得られたことから,差し引き研究計画時と比較して大きな遅れはないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り,緑変が確認された藻体に対して,上記に述べたPhycoerythrin蓄積を取り巻く機構が可逆的なものであるという仮定の基,緑変状態からの復帰,餌料価値の回復方法について検討を行う。また,並行して,本株の窒素源取り込みおよびフィコエリスリンの自己分解を制御する遺伝子領域の同定,発現量解析を行っていく予定である。
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Research Products
(5 results)