2019 Fiscal Year Annual Research Report
センサレス切削力推定を応用した実時間主軸速度制御による能動的びびり振動抑制
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19J13204
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大和 駿太郎 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | びびり振動 / 機械加工 / SSV / センサレス切削力推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,センサレス切削力推定を応用したびびり振動監視に基づき主軸速度を実時間制御することで,びびり振動の自律抑制機械加工システムを開発することを最終目的としている. 本年度は,旋削加工やボーリング加工など,比較的低速な主軸回転数プロセスで効果的な正弦波主軸速度変動(SSSV)の最適設計則の導出を行った.具体的には,SSSVが1刃前と現在における加工波面の位相差を変化させることから,無線工学における位相変調との技術的相似性に着目し,無線工学において定義される変調指数をSSSVの設計指標として新たに理論展開した.その結果,変調指数を引数とする0次第1種ベッセル関数の極小値に対応するようにSSSVを設計することで主軸速度変動1周期におけるプロセスエネルギー収支を最小とし,最も効率的にびびり振動を消散できることを明らかにした.大型門型工作機械を用いたボーリング加工による検証実験においても,エネルギー収支とびびり振動抑制効果に相関があることが確認された.想定では加工プロセスのエネルギーバランスを最小化することでびびり振動をロバストに抑制できると考えていたが,実際にはSSSVの1周期内でびびり振動が瞬間的に発達して不安定化するビート振動が生じ,加工面品質を向上できない場合が多々あった.これにより一時研究の行き詰まりを見せたが,ビート振動がSSSVにおける最大主軸速度付近で発生しやすいという点に着目し,最大主軸回転数付近での瞬間安定性を考慮した設計制約式を新たに提案した.これにより,エネルギー収支と最大主軸回転数付近での瞬間安定性に関する提案式を全て満たすことで,ビート振動を生じずに最もびびり振動を抑制できることを確認した.提案手法は,びびり振動周波数さえ計測できればSSSVを瞬時に最適設計して適用できるため,自律適応型のびびり振動抑制システムを構築する上で極めて有用な特性を持つ.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は,FMラジオ等の変調理論で利用される変調指数を,正弦波主軸回転数変動(SSSV)によるびびり振動抑制技術に応用展開し,変調指数に応じた加工プロセスエネルギーの観点からSSSVの最適設計則を提案することを目標とした.この点に関して,理論展開に成功し十分に目標を達成した.さらに,変調指数以外にいくつかの設計制約式を提案し,それらすべてを満たす条件にSSSVを設計することで,びびり振動をロバスト抑制できることを明らかにするなど,期待以上の進展を見せた.上記の研究成果に関連して,国内外の学術会議で成果発表を行い高い評価を得たことからも,研究は当初の計画以上に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画は順調に進んでおり,引き続き計画を変更せずに進める.令和2年度は,センサレス切削力推定に基づくびびり振動監視システムと,それに基づく実時間主軸速度制御によるびびり振動抑制システムの開発・統合を引き続き行い,エンドミル加工に代表される多刃回転工具プロセスにおけるびびり振動の自律抑制にも取り組む.一部すでに検証を始めており,約5000mm×5000mm×5000mmの大型工作機械においても,推定切削力からびびり振動状態及び振動周波数を抽出可能であることを確認し,センサレス切削力推定に基づくびびり振動の発生検知及び周波数の推定,最適SSSVによる自動抑制に至る一連の機能実装を進めている.
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Research Products
(8 results)