2019 Fiscal Year Annual Research Report
BRCA1/2遺伝子変異に対するハイスループット機能解析法の開発
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19J13207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池上 政周 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | BRCA2 / 病的意義 / ハイスループット機能解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝性乳がん・卵巣がんの原因遺伝子として知られるがん抑制遺伝子BRCA1/2には、機能が不明な多数の変異体(variant of unknown significance, VUS)が存在している。遺伝子検査でVUSが検出された場合、その変異体が良性であるとも病原性があるとも判断できず、治療方針の決定に役立たないばかりか、患者に不安を抱かせることに繋がるため、VUSの存在は遺伝子検査において大きな問題となっている。本研究は、BRCA1/2欠損細胞株に対し、野生型および変異型のBRCA1/2遺伝子を導入して安定発現させ、PARP阻害薬に対する感受性が変化する程度によってその変異体の活性・病原性を判定する手法の開発を目的としている。 本年度はBRCA遺伝子に対する革新的なハイスループット機能解析手法であるmixed-all-nominated-mutants-in-one method for BRCA: MANO法)を構築し、186種類のVUSを含むこれまでで最大規模の244種類のバリアントについて機能解析を行った結果、新たに37種類の病的変異体を同定した。さらに本手法の臨床応用例として、遺伝子検査で新たに発見された変異体の病的意義を迅速に判定し、報告するシステムであるAccurate BRCA Companion Diagnostic (ABCD) テストを構築した。本システムは、適切な治療方針が定まらず不安を抱えていたBRCA意義不明変異体保持者に正しい情報を伝えることができることから、発がんリスク低減手術としての予防的乳腺/卵巣・卵管切除術やPARP阻害薬投与の必要性を判断するためのコンパニオン診断としての活用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BRCA2欠損細胞株DLD1に対してBRCA2を導入させ、PARP阻害薬に対する感受性の変化をHigh-throughputの系で検出する手法を確立していた。しかし、この実験系はわずかな実験条件の変化によって結果が変動する傾向が見られた。細胞の状態によって細胞に導入され発現する遺伝子のタンパク量が一定しないことが原因と考えられた。そこで、ベイズ推定の手法を用い、繰り返し行った実験間の誤差を補正するため、高性能のPCを購入のうえ、ハミルトニアンモンテカルロ法を用いたシミュレーションを行うことで正確な各変異体の機能評価を行う方法を確立した。以上の結果を統合し、BRCA遺伝子のHigh-throughput病的意義判定法であるMANO-B法を構築した。この結果を論文として公表した(DOI : 10.1038/s41467-020-16141-8)。
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Strategy for Future Research Activity |
BRCA2に対して確立した手技を用い、BRCA1に対しても同様の解析を進めている。しかし、BRCA1欠損は細胞にとって致死的となる場合が多く、CRISPR/cas9を用いたknockoutを複数細胞に試みたが上手く欠損細胞株を確立できなかった。そのため、現在はBRCA1欠損細胞株であるUWB1.289を用い、BRCA1野生型を導入してPARP阻害薬に対する感受性の変化を評価している段階である。今後は引き続きBRCA1に関する実験系の確率、数百種の変異体作成、論文化を行うとともに、この手法を他のがん抑制遺伝子にも適用できるよう、欠損細胞株を用いるのではなくsiRNAを用いた手法の開発も視野に入れて研究を進めていく予定である。
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Research Products
(1 results)