2019 Fiscal Year Annual Research Report
Search for the Location and Magnitude of the Australasian Tektite Event
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19J13252
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
多田 賢弘 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 天体衝突 / テクタイト / イジェクタ / 東南アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
およそ80万年前に東南アジアで起きた大規模天体衝突の衝突地点・規模・様式を明らかにすることが目的である。衝突により飛散した物質が堆積した地層(イジェクタ層)の分布と、衝撃波により基盤岩が被った変成度の分布から衝突地点の特定を目指す。 タイ、ラオス、カンボジアにおいて、計4週間程度の地質調査を実施した。その結果イジェクタ層は、岩相・層序から3つのユニット1-3に区分でき、堆積学的特徴から、ユニット1は衝突に伴い基盤岩が再堆積したもの、ユニット2は破砕された礫が堆積したもの、ユニット3は細粒の粒子が降り積もって形成したと考えられる。ユニット2と3は広域に連続して分布する。特にユニット2の層厚はラオス南西部に向かって増大し、この地域が衝突地点であることを示唆する。この結果について現在論文を投稿中であるほか、日本地球惑星科学連合大会、日本惑星科学会講演会、アメリカ地球物理学連合講演会において報告した。 ユニット2から多数のテクタイト片を発見した。地層中の狭い範囲に多数のテクタイト片が密集していること、それらが破断面を向かい合わせに埋没していることから、これらの破片は一塊のテクタイトが破砕されたもので、破砕直後に埋没しその後動かされていないと考えられる。この結果はこの層準がイジェクタ層であることを支持する。これについて現在論文を投稿準備中である。 基盤岩が被った衝撃変成度を推定しその分布を調べるため、タイ、ラオスの基盤岩について、放射光X線回折分析も行った。石英の格子定数は衝撃圧力に応じて増大することが知られる。分析の結果、石英の格子定数は、タイ・ラオス国境南部付近で最大になることが分かり、この地域で最も石英の変成度が高いことが示唆された。この結果は、この地域に衝突したことを示唆し、イジェクタ層の分布から推定される範囲と整合的である。これについて、日本地質学会学術大会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では、2019年度はイジェクタ層の分布の調査に加え、基盤岩について複数の指標を用いて経験温度圧力を推定する予定であった。イジェクタ層の分布の調査は予定通り遂行したものの、基盤岩の変成度の推定については一つの指標のみとなったため、目標を完全に達成したとは言えない。一方で、2020年度に計画していた推定地域での標高データの精査及び調査を先取りして本年度に行っているほか、イジェクタ層中からのテクタイト片の密集部の発見という予定外の重要な発見があった。以上を鑑みて、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は主にタイ・ラオス・カンボジアの複数地点におけるイジェクタ層の野外調査と、調査中に採取した基盤岩試料の放射光XRD分析による変成度の推定を行った。本年度は以下の計画で研究を行う予定である。 4月~5月にかけて、2019年のタイ東北部調査で発見したテクタイトの産状について論文にまとめ、国際学術誌Progress in Earth and Planetary Science誌に投稿する。また国際学術誌Meteoritics and Planetary Science誌に投稿し現在リバイス中の、衝撃変成石英発見に関する論文について、追加の薄片観察を行い、出版する。 6月~7月にかけて、2016~2019年にかけて行ったタイ・ラオス・ベトナム・カンボジアにおける野外調査結果の総まとめを行い、博士論文の執筆を開始する。 8月(新型コロナウイルス感染症拡大に伴う情勢が落ち着き次第)以降、各調査地点のイジェクタ試料について薄片・スラブ試料を作成し、偏光顕微鏡下での観察・ポイントカウンティングを行い岩相を詳細に記載、礫種組成・鉱物組成の異方性を明らかにする。そのうえで複数地点において試料中の石英粒子の微細層状構造(ラメラ)の方位測定を行い、衝撃変成石英を同定する。衝撃変成石英の同定・計数には東京大学の4軸ユニバーサルステージ搭載偏光顕微鏡を用いる。これまでの野外調査・室内観察・分析によって得られたインドシナ半島広域におけるイジェクタ層の地理分布、基盤岩の衝撃変成度の地理分布に基づいて衝突地点を制約し、博士論文としてまとめ提出する。得られた研究結果は、随時日本地球惑星科学連合大会、日本地質学会学術大会、American Geophysical Union Fall Meeting において報告する予定である。また、衝突地点の推定結果は投稿論文としてまとめ、国際誌に投稿する。
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Research Products
(10 results)