2019 Fiscal Year Annual Research Report
X線連星における降着円盤風の放射流体計算と放射輸送計算を使用した観測的研究
Project/Area Number |
19J13373
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
都丸 亮太 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ブラックホール / X線連星 / 放射流体シミュレーション / 放射輸送シミュレーション / 降着円盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では,典型的な低質量ブラックホールX線連星である H1743-322,低質量中性子星X線連星であるGX 13+1を対象として,これらの天体に見られる円盤風の駆動機構が熱ー放射駆動であるかどうかを明らかにするために,放射流体シミュレーションと放射輸送シミュレーションを実行し観測スペクトルと比較することを行った。これらの内容を論文として投稿するとともに,博士論文として提出し審査に合格した。 H1743-322を対象とした放射流体シミュレーションを行った結果,X線照射加熱だけでは観測される速度を再現できないが,X線照射による加速を加味することで観測される速度を得られることを明らかにした。さらに,X線照射スペクトルを約100 keVにピークを持つハード状態のものに変更しその影響を調べた。この結果,ハード状態では硬X線の影響でガスが完全電離されてしまうことが明らかになった。これはハード状態では吸収線が見られないという観測と無矛盾である。これらの内容をまとめ,MNRASに投稿し受理された。 この放射流体シミュレーションで得られた密度,速度分布を使用し,その円盤風内部で作られる輝線吸収線構造をモンテカルロ放射輸送シミュレーションで計算し観測と比較した。その結果,観測で作られる吸収線スペクトルを再現することに成功した。また,速度構造を反映した特徴的な吸収線構造から他のモデルとの違いを明確にし,将来のXRISM衛星で観測されうることを示した。この結果をまとめMNRAS誌に投稿し受理された。 H1743-322に使用した方法を銀河系内で最も円盤が大きくかつ,中性子星であるGX 13+1に適用し,この天体においても観測されるスペクトルが,熱-放射駆動円盤風による吸収線で説明できることを明らかにした。この結果をまとめMNRASに投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調にすすみ,論文にまとめることができている。 本来目的としていた天体であるGRO J1655-40については,これから取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
目的としていた天体であるGRO J1655-40の降着円盤風が熱-放射駆動機構であることを示すために研究を進める。これまでの研究による放射流体シミュレーション,放射輸送シミュレーションの枠組みは構築されている。しかしながら,この天体に適用するためには,放射輸送シミュレーションコードに低電離な(Li, Be, B-like)イオンからのデータベースを加え,さらに動作検証を進める必要がある。今年度はこのコードの改良そ進め,GRO J1655-40の観測データがこれまで構築した放射流体シミュレーションと放射輸送シミュレーションにより再現できるのかを明らかにする。
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