2019 Fiscal Year Annual Research Report
尿路癌特異的に検出される尿中免疫複合体を標的とした尿路癌の簡便な尿診断法の開発
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19J13415
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
相原 希美 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 免疫複合体 / エピトープ / 質量分析 / 架橋剤 / イムノコンプレキソーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
尿路癌の診断は尿細胞診や膀胱鏡で行われるが、検出感度や侵襲性に課題がある。また、診断に有用で特異性の高いマーカーは見つかっていない。我々はこれまでにイムノコンプレキソーム解析法を使って尿路癌患者の尿中から尿路癌に特徴的な免疫複合体抗原(Ceruloplasminなど)を特定した。本研究では尿路癌の新たな診断法の開発に向け、尿中免疫複合体を定量可能なELISA法の開発を目指す。免疫複合体を定量可能なELISA法を開発するためにはエピトープの特定が重要である。そこで本年度は、免疫複合体モデルを使って、エピトープ切除法、架橋剤法を利用したエピトープ特定法の構築に取り組んだ。はじめに、エピトープ切除法(ビーズ上に捕集した免疫複合体のエピトープ以外の部分を酵素によって切除し、残ったエピトープ部分を溶出させ質量分析により該当するアミノ酸配列を特定する手法)を参考に、他の文献で既にエピトープ配列が特定されている免疫複合体をin vitroで形成し、これをモデルとして、酵素・反応時間の最適化を行い、エピトープに該当する部分のアミノ酸の配列の特定を行った。特定したアミノ酸配列は複数あり、いずれが真のエピトープであるか分からなかった。そこで、架橋剤を用いてエピトープを特定する方法(架橋剤法;架橋剤を用いて生体内のタンパク質複合体を架橋し、酵素消化後の架橋ペプチドの質量を分析することでタンパク質の相互作用を解析する手法)を新たに考案し、エピトープ切除法、架橋剤法で共通して特定されたアミノ酸配列を真のエピトープとして定めることとした。そこで、還元剤で切断可能な架橋剤(DTSSP)を用いて、免疫複合体のエピトープの特定を行った。さらに、架橋ペプチドに特有のマスフラグメントを直接解析できるソフトウェア(MeroX)とこのソフトウェアに対応する架橋剤を用いて特定したエピトープの検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エピトープ切除法に加え、新たな方法(架橋剤法)を加えたことで、より精度の高いエピトープ特定法を構築できると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、アミノ酸配列が既知の抗体医薬品(Infliximab, Adalimumab, Trastuzumab, Pertuzumab)とそれぞれの標的タンパク質 (TNFα、HER2) を新たな免疫複合体モデルとし、これらを使って上記のエピトープ切除法、架橋剤法によるエピトープ候補の選別、MeroX 解析による検証を行う。エピトープ特定法の構築後は、尿路癌の診断の実用化に向け、既に特定している尿路癌に特徴的にみられる免疫複合体(Ceruloplasminなど)のエピトープを各患者の尿中から特定する。その後、特定したエピトープの情報をもとに、エピトープ部分とは立体構造上反対側に位置するアミノ酸配列を認識可能な抗体をプレートに固定化させたプレートを作り、免疫複合体を定量可能なELISA法を構築する。
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