2019 Fiscal Year Annual Research Report
X線偏光による強磁場中性子星連星の放射領域の幾何構造の解明
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19J13685
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
内田 和海 広島大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 大質量X線連星 / 中性子星 / X線偏光 |
Outline of Annual Research Achievements |
大質量X線連星(HMXB)は、ブラックホールや中性子星のようなコンパクト星と通常の恒星からなる連星系である。このような系では、恒星が出す星風の一部がコンパクト星の重力によって取り込まれ、降着によってX線で明るく輝く。特に中性子星を主星に持つ場合は、中性子星の持つ磁場強度によって降着の振る舞いが変わると言われているが、詳しいことはほとんど分かっていない。これらの解明には、従来行われてきたX線の測光、分光解析に加えて、まだほとんどデータのないX線偏光観測が重要となる。そこで私は、中性子星を主星に持つHMXBの星周構造及び降着機構の解明のため、まだ解析の行われていないHMXBの衛星データの解析と、X線偏光観測気球実験X-Caliburの運用を行った。 (1)中性子星を主星に持つHMXB:IGR J00370+6122の、XMM-Newton, Swift, すざく, RXTE等の複数のX線衛星による観測データを解析した。その結果、中性子星スピン周期が2年間で10秒程度と、大幅にスピンアップしている可能性があることが分かった。これは、中性子星が強力な磁場を有する可能性を示唆している。また、中性子星スピン周期毎のスペクトル解析を詳細に行っており、これらの結果は学会等で発表すると共に、現在主著論文として執筆中である。 (2)日米欧の共同ミッション:X-Caliburの打ち上げを行った。X-Calbiurは、硬X線の偏光観測を行う気球実験であり、2018年末に南極から打ち上げられた。打ち上げ中は各国でモニター当番を行うが、私は日本チームにおいて観測マニュアルの作成や実務、打ち上げ後のデータの考察を行った。これらの結果は他の衛星データと合わせて解釈を行い、共著論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大質量X線連星における中性子星のX線偏光観測に関連して、XMM-Newtonやすざく衛星等のX線データの解析や、X-Caliburによる中性子星大質量X線連星の観測を行った。また、将来偏光観測に用いられることが期待されている、GAGGシンチレータの基礎実験も進めている。これらの結果は共著3編とともに、現在、GAGGシンチレータの自己吸収特性についての主著論文を1編投稿中(再投稿が終わり、まもなく受理見込み)である。また、中性子星を主星に持つ大質量X線連星の解析結果についても、大学内外の研究者とともに考察を進めており、その内容についても主著論文を1本執筆中である。論文だけでなく国内国外の会議や研究会での報告や、イベント等でのアウトリーチ活動による研究成果の社会への還元も積極的に行った。よって、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1)次回のX-Calibur打ち上げに向けた、検出器の改良 X-Caliburは複数回の打ち上げを行うが、次回のフライトでは硬X線望遠鏡を変更することで検出効率を10倍程度向上させるなど、大幅なアップグレードを予定している。そこで私は、ビーム試験等のキャリブレーション作業などを通して、検出器の性能を精度良く見積もるとともに、調整を行う。 2)大質量X線連星における中性子星周辺構造と磁場強度の推定 これまで行われてきた、X線エネルギースペクトルの構造による中性子星の磁場推定では、中性子星磁場が強すぎる場合には適用できない。そこで、近年実用化されようとしている、中性子星のスピン周期と磁場強度を定式化した降着トルクモデルを実天体に適用することで、磁場強度を推定する。また、スペクトルの詳細な解析を通して、中性子星における降着柱の構造と星周構造に制限をつける。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Observations of a GX 301-2 Apastron Flare with the X-Calibur Hard X-Ray Polarimeter Supported by NICER, the Swift XRT and BAT, and Fermi GBM2020
Author(s)
Abarr Q., Baring M., Beheshtipour B., Beilicke M., Geronimo G. de, Dowkontt P., Errando M., Guarino V., Iyer N., Kislat F., Kiss M., Kitaguchi T., Krawczynski H., Lanzi J., Li S., Lisalda L., Okajima T., Pearce M., Press L., Rauch B., Stuchlik D., Takahashi H., Tang J., Uchida N.(以下7名)
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 891
Pages: 70~70
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Estimation of the detected background by the future gamma ray transient mission CAMELOT2019
Author(s)
J. Ripa, G. Galgoczi, N. Werner, A. Pal, M. Ohno, L. Meszaros, T. Mizuno, N. Tarcai, K. Torigoe, N. Uchida, Y. Fukazawa, H. Takahashi, K. Nakazawa, N. Hirade, K. Hirose, S. Hisadomi, T. Enoto, H. Odaka, Y. Ichinohe, Z. Frei, L. Kiss
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Journal Title
Astronomische Nachrichten
Volume: 340
Pages: 666~673
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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